Q学習:試行錯誤で学ぶAI
人間が自転車に乗れるようになるまでには、何度も転びながらバランスの取り方を学ぶ必要があります。最初はうまくいかないことも、繰り返すうちにコツをつかみ、やがてスムーズに走れるようになります。このように、試行錯誤を通して学習することは、人間にとって自然な行為です。
人工知能の世界でも、同じように機械に試行錯誤をさせながら学習させる方法が注目を集めています。この学習方法の一つが、Q学習と呼ばれる手法です。Q学習は、強化学習と呼ばれる分野に属しています。強化学習とは、機械が周囲の環境と相互作用しながら、報酬を最大化する行動を学習する枠組みです。自転車の例で言えば、転ばずに長く走ることが報酬となり、その報酬を最大化するように、バランスの取り方やペダルの漕ぎ方を学習していくイメージです。
Q学習では、行動の価値を数値化して、その価値を基に行動を選択します。価値が高い行動ほど、選択される確率が高くなります。自転車の例で言えば、「ペダルを速く漕ぐ」という行動と「ハンドルを左右に大きく振る」という行動があるとします。転ばずに長く走れた場合に報酬が得られるとすると、「ペダルを速く漕ぐ」行動の価値は高く、「ハンドルを左右に大きく振る」行動の価値は低くなります。このように、試行錯誤を通して行動の価値を更新していくことで、機械は最適な行動を学習していきます。
Q学習は、様々な分野で応用されています。例えば、ロボットの制御、ゲームの攻略、商品の推奨など、私たちの生活にも深く関わっています。ロボットであれば、目的の場所に移動するために最適な経路を学習したり、ゲームであれば、高い得点を得るための戦略を学習したりすることができます。また、商品の推奨では、顧客の過去の購買履歴に基づいて、最適な商品を推薦することができます。このように、Q学習は様々な問題を解決するための強力な道具となっています。