データリーケージ:機械学習の落とし穴

データリーケージ:機械学習の落とし穴

AIを知りたい

先生、「データリーケージ」ってよく聞くんですけど、どんな問題なんですか?

AIエンジニア

簡単に言うと、本来予測に使うべきではないデータを使ってAIを学習させてしまうことだよ。たとえば、未来のデータを使って過去の出来事を予測するようなものだね。これだと学習時には精度が高く見えても、実際に使ってみると全く役に立たないんだ。

AIを知りたい

どうしてそんなことが起きるんですか?

AIエンジニア

原因の一つとして、結果に影響を与えるデータが、原因よりも先に記録されている場合がある。例えば、病気の診断結果を予測したいのに、治療後のデータを使って学習させてしまうと、診断結果に影響を与える治療データが先に記録されているため、データリーケージが起きる。他にも、本来は予測時に得られない情報が学習データに含まれている場合もある。だから、データリーケージを防ぐには、原因となるデータが結果よりも先に記録されているか、予測時に本当に使えるデータだけを使っているかを確認することが大切なんだよ。

データリーケージとは。

人工知能に関する言葉である「データ漏れ」について説明します。データ漏れとは、本来は学習に使ってはいけないデータを使って学習してしまうことです。これにより、学習中は精度が高いように見えても、実際に使ってみると全く役に立たないという問題が起こります。例えば、本来なら予測に使えないはずの情報を使って予測したり、学習データの中にテストデータと似た情報が含まれていたりする場合が挙げられます。これらの問題を解決するためには、予測の根拠となる情報よりも後に、予測したい情報を記録するようにしたり、学習に使うデータはテストに使うデータよりも前の時点で記録されたものを使うようにする必要があります。

データリーケージとは

データリーケージとは

データリーケージとは、機械学習のモデルを作る段階で、本来使ってはいけない情報が、水道の配管から水が漏れるように、こっそりと紛れ込んでしまう現象のことです。まるで未来を予知するかのように見えるモデルが作られてしまうことがありますが、これは実際には使えない情報に基づいているため、実用化の段階で予測精度が大きく下がってしまいます。これは、まるで砂上の楼閣のように、一見立派に見えても、実際には脆く崩れやすいものと言えるでしょう。

例えば、ある商品の売れ行きを予測するモデルを作るとしましょう。この時、顧客が商品を買った後に集まる情報、例えば、買った後に答えてもらう満足度調査の結果などを、うっかり学習データに混ぜてしまうと、モデルは非常に高い精度で売れ行きを予測できるように見えてしまいます。買った後に得られるはずの満足度情報が、まるで商品を買う前から分かっていたかのように扱われてしまうからです。しかし、現実の世界では、商品を買う前に満足度を知ることはできません。そのため、このモデルは一見素晴らしい性能を示すにもかかわらず、実際に使ってみると全く役に立たないという結果になってしまいます。

また、別の例として、病気の診断モデルを考えてみましょう。患者の検査データから病気を診断するモデルを作る際、将来行われる手術の結果をうっかり学習データに含めてしまうと、どうなるでしょうか。モデルは非常に高い精度で病気を診断できるように見えますが、これは手術の結果という未来の情報を使ってしまっているためです。現実には、診断の時点で手術の結果を知ることは不可能です。このように、未来の情報が紛れ込むことで、モデルはあたかも超能力を持っているかのような錯覚を起こさせますが、これは現実にはあり得ない情報に基づいた予測です。

このようなデータリーケージを防ぐためには、データの収集方法や前処理の方法を注意深く見直すことが重要です。どのような情報が、どのような順番で得られるのかをきちんと把握し、使ってはいけない情報をモデルに与えないように気を付けなければなりません。また、モデルの精度検証も慎重に行う必要があります。一見高い精度が出ているように見えても、それがデータリーケージによるものではないか、常に疑いの目を持ち、様々な角度から検証することが大切です。

使ってはいけない情報 問題点
商品の売れ行き予測 顧客が商品を買った後の満足度調査結果 モデルは高い精度で売れ行きを予測できるように見えるが、実際には役に立たない。
病気の診断 将来行われる手術の結果 モデルは高い精度で病気を診断できるように見えるが、現実には不可能な情報に基づいている。

リーケージの種類

リーケージの種類

情報漏えい、いわゆるデータリーケージには様々な種類がありますが、大きく分けて二つの種類について詳しく説明します。一つ目は、説明変数に本来予測に使うことができない情報が紛れ込んでしまうケースです。説明変数とは、予測を行う際に根拠となる変数のことです。ここに、未来の情報が誤って含まれてしまうと、まるで未来を予知しているかのような高い精度の予測モデルができてしまいます。しかし、これは現実世界ではあり得ない情報を使ってしまっているため、実際の予測では全く役に立ちません。例えば、明日の売上を予測したいのに、誤って明日の天気予報のデータを使って学習させてしまうような場合です。また、目的変数、つまり予測したい値と非常に強い関連性を持つものの、実際には入手が難しい変数を含めてしまう場合も、説明変数へのリーケージに当たります。例えば、病気の診断を予測したい際に、実際には診断結果が出るまで分からないような検査結果を説明変数に含めてしまうと、あたかも完璧な予測ができるように見えてしまいます。

二つ目は、訓練データとテストデータの分割方法が不適切な場合に起こるリーケージです。訓練データとは、機械学習モデルの学習に用いるデータのことで、テストデータとは、学習済みのモデルの性能を評価するために用いるデータのことです。時系列データ、つまり時間順に並んだデータの場合、未来のデータが訓練データに含まれてしまうと、モデルは未来の情報を使って学習してしまいます。これは、過去から未来へと流れる時間の流れに反しており、リーケージが発生します。例えば、来月の株価を予測するモデルを学習させる際に、来月のデータが訓練データに混ざっていると、非常に高い精度が出るように見えますが、現実には不可能な学習を行っていることになります。また、交差検証、つまりデータを複数のグループに分割してそれぞれでモデルを学習・評価する手法においても、データの分割方法を間違えるとリーケージが発生する可能性があります。あるグループの学習データに、別のグループの評価データが含まれてしまうような場合です。これらのリーケージは、モデルの性能を実際よりも高く見せてしまうため、実運用に投入した際に期待した性能が出ないという問題につながります。ですので、リーケージの発生を防ぐことは、精度の高い予測モデルを作る上で非常に重要です。

リーケージの種類

リーケージを防ぐ対策

リーケージを防ぐ対策

機械学習モデルの精度を高めるためには、リーケージと呼ばれる、本来使ってはいけない情報がモデルに漏れてしまう現象を防ぐことがとても大切です。リーケージは、モデルの精度を過大評価させてしまい、実務で使う際に期待したほど性能が出ない原因となります。対策として、まずデータの成り立ちを深く理解することが重要です。どの情報が、予測を立てる時点で実際に使える情報なのかを注意深く見極める必要があります。

例えば、顧客が商品を買うかどうかを予測するモデルを作る場合を考えてみましょう。顧客の年齢や過去の買い物履歴といった情報は、商品を買う以前に分かる情報なので、予測に使うことができます。しかし、買いたい商品をカートに入れたかどうかといった情報は、買うという行動とほぼ同時か、買った後に分かる情報なので、予測に使うべきではありません。使うと、まるで未来を予知したかのような高い精度が出てしまいますが、これは現実的ではありません。

データを集めて整理する際にも、時間の流れに気を付ける必要があります。目的とする出来事が起きた時間を基準に、それより前の情報のみを使って予測モデルを作ります。

学習用データとテスト用データを分ける作業も大切です。時間の流れを考慮し、過去のデータで学習し、未来のデータでテストします。例えば、3ヶ月分のデータがある場合、最初の2ヶ月分のデータでモデルを学習させ、残りの1ヶ月分のデータでテストします。

交差検証という手法を使う場合も同様です。これは、データを複数のグループに分け、それぞれのグループで順番にテストを行うことで、モデルの精度をより正確に評価する手法です。この場合も、各グループで、未来の情報が学習に混ざらないように注意深く分割する必要があります。

これらの点をしっかりと押さえることで、リーケージを防ぎ、本当に使える精度の高い機械学習モデルを作ることができます。

リーケージ対策 説明
データの成り立ちの理解 予測時点で利用可能な情報を見極める 顧客の年齢や過去の購買履歴はOK。カート投入情報はNG。
時間の流れに注意 目的事象発生以前の情報のみを使用 購入発生時刻以前の情報のみでモデル構築
データ分割 学習用とテスト用を適切に分割 過去2ヶ月で学習、残り1ヶ月でテスト
交差検証 未来の情報が学習に混ざらないよう分割 時系列順にグループ分け

目的変数の観測

目的変数の観測

ある事柄について予測する数理模型を作る時、結果に影響を与える情報が模型を作る段階で混入してしまうことを防ぐことはとても大切です。このような情報の混入は、数理模型の性能を正しく測れないという問題を引き起こします。これを防ぐための対策として、予測したい事柄に関する情報の入手方法を工夫することが重要になります。

数理模型を作るための学習データと、その性能を確かめるための検証データは、情報の入手時期を明確に区別する必要があります。学習データで用いる情報は、検証データで用いる情報よりも時間的に必ず前の時点で入手されたものでなければなりません。これは、数理模型が未来の情報を基に学習することを防ぐためです。

例えば、ある病気の予測数理模型を作るとします。この場合、学習データには過去の患者さんの情報を用います。具体的には、発病前の特定の時点での状態から、将来その病気になるかどうかを予測するように数理模型を学習させます。そして、検証データには、学習データよりも後の時点での患者さんの情報を用いて、数理模型の性能を評価します。こうすることで、数理模型は過去の情報だけを基に未来を予測することになり、現実世界でどのくらい正確に予測できるかを評価できます。

もし、学習データと検証データの情報入手時期が重なっていたり、検証データの方が過去の情報だったりすると、数理模型は未来の情報を使って学習してしまい、本来は見えないはずの情報が見えてしまうことになります。これは、まるで試験問題を事前に見てしまっているようなもので、正しい能力評価ができなくなります。ですから、情報の入手時期を適切に設定し、時間的な順序関係を保つことがとても重要です。

適切な検証

適切な検証

機械学習のモデルを作る上で、そのモデルがどれくらい使えるものなのかをきちんと確かめることはとても大切です。そして、確かめる方法を間違えると、モデルが実際よりも良く見えてしまうことがあります。これを「漏れ」といいます。漏れがないように、きちんと確かめる方法を選ぶことが重要です。

よく使われる方法に、データを訓練用とテスト用に分ける方法と、交差検証という方法があります。データを訓練用とテスト用に分ける方法は、まずデータ全体を二つの部分に分けます。片方の訓練用データでモデルを作り、もう片方のテスト用データでモデルの良さを調べます。

交差検証は、データをいくつかのグループに分け、順番に一つのグループをテスト用データ、残りを訓練用データとしてモデルの良さを調べます。これを繰り返すことで、より詳しくモデルの良さを調べることができます。

特に、時間の流れに沿って集めたデータ(時系列データ)を扱う場合は、データの分け方に注意が必要です。例えば、株価の動きを予測するモデルを作る場合を考えてみましょう。もし、データをランダムに訓練用とテスト用に分けてしまうと、未来の情報が訓練用データに含まれてしまう可能性があります。これは、未来の株価が過去の株価に影響を与えることはあり得ないため、本来あってはならないことです。このような漏れがあると、モデルの良さを正しく測ることができません。

時系列データを扱う場合は、時間の流れを崩さないようにデータを分ける必要があります。つまり、過去のデータを訓練用データに、未来のデータをテスト用データに割り当てる必要があります。交差検証を行う場合も同様に、時間の流れに沿ってグループ分けをする必要があります。

このように、データの種類や性質に合わせて、適切な方法でモデルの良さを確かめることで、より信頼できる機械学習モデルを作ることができるのです。

方法 説明 利点 欠点 時系列データへの適用
訓練データとテストデータに分割 データを訓練用とテスト用に分割し、訓練用データでモデルを学習し、テスト用データでモデルの性能を評価 シンプルで理解しやすい データの分割方法によっては、モデルの性能評価が偏る可能性がある 時間の流れを考慮せずに分割すると、未来の情報が訓練データに混入する「漏れ」が発生し、正しく評価できない。時間の流れに沿って分割する必要がある。
交差検証 データを複数のグループに分割し、各グループを順番にテスト用データとし、残りのグループを訓練用データとしてモデルの性能を評価 モデルの性能をより詳しく調べることができる 計算コストが高い 時間の流れに沿ってグループ分けする必要がある。