知識を繋げる:オントロジー構築入門
近頃は、人工知能がめざましく進化するのに伴い、人の知識を計算機に理解させる技術が大変重要になってきています。この技術の中核を担うものの一つに、存在論の構築があります。存在論とは、平たく言うと、ある専門分野における概念や言葉、更にはそれらの繋がりを整理して表したものです。人は言葉を理解する時、普段意識せずに膨大な背景知識を活用しています。例えば、「鳥」という言葉を耳にすると、空を飛ぶ、羽がある、卵を産むといった情報を自然と思い浮かべます。計算機にも同じように言葉を理解させるには、このような背景知識を分かりやすく示す必要があります。存在論はまさにそのような役割を果たし、計算機が知識を処理し、筋道を立てて考えるための土台となります。
存在論を構築することで、様々な利点が生まれます。例えば、異なるシステム間での情報共有が容易になります。それぞれのシステムが独自の言葉で情報を管理していると、システム同士が連携する際に、言葉の壁が生じてしまいます。しかし、共通の存在論を用いることで、システム間で意味を統一し、円滑な情報交換を実現できます。また、存在論は、新しい知識の発見や既存知識の矛盾点を明らかにするのにも役立ちます。概念間の関係性を視覚的に表現することで、隠れたパターンや関係性を見つけ出すことができます。更に、存在論に基づいた推論は、計算機が自律的に新しい知識を生成することを可能にします。例えば、「鳥は卵を産む」という知識と「ペンギンは鳥である」という知識から、「ペンギンは卵を産む」という新しい知識を導き出すことができます。このように、存在論は人工知能の発展に欠かせない技術であり、今後ますますその重要性が増していくと考えられます。計算機がより深く人の言葉を理解し、様々な分野で活躍するためには、質の高い存在論の構築と活用が不可欠です。