知識を表現する『has-a』
人間の言葉を理解し、考える機械を作ることは、人工知能における大きな目標です。そのために、コンピュータに人間の知識をどのように教え込むかは重要な課題となっています。様々な方法が研究されていますが、その中で「意味ネットワーク」という知識表現の手段が注目されています。
意味ネットワークは、人間の頭の中にある知識を、視覚的に分かりやすく表現する方法です。まるで概念の地図を描くように、様々な概念を結びつけて、ネットワーク構造を作ります。このネットワークは、「節点(ふし)」と「枝(えだ)」から成り立っています。節点は、具体的な物や抽象的な概念などを表します。例えば、「鳥」や「空」、「飛ぶ」といった言葉が節点になります。枝は、節点と節点の関係を表すもので、矢印を使って表現します。例えば、「鳥」という節点から「飛ぶ」という節点へ矢印を引くことで、「鳥は飛ぶ」という関係を示すことができます。
このネットワーク構造は、人間の脳内での知識の整理方法に似ていると考えられています。私たちは、物事について考える時、様々な概念を関連付けて理解しています。例えば、「鳥」と聞くと、「空を飛ぶ」、「羽がある」、「卵を産む」といった関連情報が自然と思い浮かびます。意味ネットワークは、このような人間の思考過程を模倣することで、コンピュータにも人間の知識を理解させようという試みです。
意味ネットワークを使うことで、複雑な知識も整理して表現できます。例えば、「ペンギンは鳥だが、空を飛べない」という知識も、意味ネットワークで表現できます。「ペンギン」から「鳥」への枝を引き、「鳥」から「飛ぶ」への枝を引きます。そして、「ペンギン」から「飛ぶ」への枝には、「できない」という情報を加えます。このように、例外的な知識も表現できるのが意味ネットワークの特徴です。コンピュータは、このネットワーク構造を読み解くことで、様々な推論を行うことができるようになります。