質疑応答システムの仕組み
人と人との間で言葉を交わす時、質問とその答えは欠かせないものです。私たちは毎日、色々な問いかけをし、その返事によって物事を深く理解したり、考えを伝え合ったりしています。この一見簡単なやり取りですが、実際には複雑な思考の過程を経ています。問いの意味を理解し、記憶や知識の中から必要な情報を探し出し、ふさわしい答えを作り上げるまでの一連の流れは、高度な情報処理能力があって初めてできることです。
例えば、友人に「昨日の映画はどうだった?」と尋ねたとします。すると友人は、まず質問の意味を理解します。次に、記憶の中から昨日の映画の感想を引っ張り出してきます。楽しかった、つまらなかった、感動したなど、様々な感情やシーンが思い出されるでしょう。そして、それらを整理し、「とても面白かったよ!特に最後の戦闘シーンは迫力満点だった」といった具体的な言葉で答えるのです。これは無意識のうちに複雑な情報処理を行っている証拠です。
近年、このような人間の持つ質疑応答能力を計算機で再現しようという研究が盛んに行われています。これが「質疑応答方式」と呼ばれる研究分野です。計算機に大量の文章データを読み込ませ、質問に対して適切な答えを返すように学習させます。目指すのは、まるで人と話しているかのように自然な会話ができる計算機の実現です。人間のように考え、理解し、答える計算機の実現は、人工知能研究における大きな目標の一つと言えるでしょう。質疑応答方式の研究が進めば、様々な場面で役立つことが期待されます。例えば、膨大な資料の中から必要な情報を探し出す作業や、お客様からの問い合わせに自動で対応するシステムなど、応用範囲は多岐に渡ります。人と計算機がより自然に、よりスムーズにコミュニケーションできる未来の実現に向けて、質疑応答方式の研究は着実に進歩を続けています。