平均絶対偏差:データのばらつきを測る
情報を詳しく調べたり整理したりする作業の中で、データがどれくらい散らばっているかを理解することはとても大切です。平均値だけではデータの全体像を捉えきれない場合がよくあります。例えば、ある地域の平均年収が500万円だったとしましょう。一見すると、そこそこ豊かな地域のように思えますが、実は少数の高所得者によって平均値が押し上げられているかもしれません。大部分の住民は年収300万円で、ごく一部の人が1000万円以上の年収を得ている可能性も考えられます。このような状況では、平均年収という一つの数字だけで判断すると、実態を見誤ってしまう危険性があります。
そこで、データの散らばり具合を測る尺度として、平均絶対偏差が役に立ちます。平均絶対偏差とは、それぞれのデータが平均値からどれくらい離れているかを平均した値です。具体的な計算方法は、まず各データと平均値の差を計算します。次に、その差の絶対値を求めます。絶対値とは、マイナスの符号を取り除いた値のことです。最後に、これらの絶対値をすべて足し合わせ、データの個数で割ります。こうして求められた平均絶対偏差は、データの散らばり具合を直感的に理解するのに役立ちます。平均絶対偏差が大きいほど、データは平均値から遠く離れた値が多く、散らばりが大きいことを示しています。逆に、平均絶対偏差が小さい場合は、データは平均値の近くに集まっており、散らばりが小さいことを意味します。
平均絶対偏差を理解することで、データの分布や特徴をより深く把握することができます。平均値だけでなく、平均絶対偏差も合わせて見ることで、データの背後にある真の姿が見えてきます。例えば、二つの地域の平均年収が同じでも、平均絶対偏差が大きく異なる場合があります。これは、収入の分布に大きな違いがあることを示唆しています。平均絶対偏差を用いることで、このような違いを明確に捉えることができるのです。