第三次AIブーム:人工知能の躍進
二〇〇六年、人工知能の世界に大きな転換期が訪れました。第三次人工知能の流行が始まったのです。この流行のきっかけとなったのは、深層学習という画期的な技術でした。深層学習は、人の脳の神経回路網を手本とした、幾重にも積み重なった層を持つ仕組みを使って、計算機が自ら膨大な量の資料から特徴を学び、複雑な課題を解くことを可能にしました。
それ以前の人工知能研究では、計算機に特定の作業をさせるためには、人が一つ一つ細かく指示を与える必要がありました。例えば、猫の絵を見分けるためには、猫の特徴、例えば耳の形や目の色、ひげの本数などを人が計算機に教え込む必要があったのです。しかし深層学習では、計算機が大量の猫の絵を自ら分析し、猫の特徴を自ら学習します。そのため、人がいちいち特徴を教えなくても、猫の絵を認識できるようになるのです。これは、従来の人工知能研究では考えられなかった、大きな進歩でした。
この深層学習の登場は、人工知能研究に新たな活力を与えました。深層学習によって、画像認識、音声認識、自然言語処理など、様々な分野で飛躍的な進歩が見られました。例えば、自動運転技術の開発や、医療診断の支援、多言語翻訳の精度向上など、これまで不可能と考えられていた領域での応用への道が開かれたのです。まさに、深層学習は人工知能の新たな時代を切り開く、鍵となる技術と言えるでしょう。そして、二〇〇六年は、その始まりの年として、人工知能の歴史に深く刻まれることになったのです。