推論高速化

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機械学習

量子化:モデルを小さく、速く

私たちの身の回りにある音や光、温度といったものは、本来滑らかに変化する連続的な量です。しかし、コンピュータはこれらの連続的な量をそのまま扱うことができません。コンピュータが理解できるのは、0と1のデジタルデータ、つまり飛び飛びの値だけです。そこで、連続的な量をコンピュータが扱える飛び飛びの値に変換する技術が必要となります。これが「量子化」です。 例えば、アナログ式の温度計を思い浮かべてみましょう。温度計の水銀柱は、気温の変化に応じて滑らかに上下します。これが連続的な量の例です。一方、デジタル式の温度計は、数値で気温を表示します。この数値は、0.1度刻みであったり、1度刻みであったりと、飛び飛びの値で表示されます。これが量子化された状態です。量子化によって、本来は無限にあった温度の表現が、有限の段階に分けられます。この段階の数を「量子化ビット数」と呼び、ビット数が多いほど、元の連続的な量に近い形で表現できます。 音楽CDの作成も、量子化の良い例です。空気の振動という連続的な量である音は、そのままではCDに記録できません。そこで、音の大きさを細かく区切り、それぞれの区間に対応する数字を記録することで、CDに音を保存します。この際に、音の波形を時間方向にも細かく区切り、それぞれの瞬間の音の大きさを数字に変換していきます。 写真も同様です。写真の色の濃淡は本来連続的ですが、デジタルカメラでは、この濃淡を飛び飛びの値に変換することで画像を記録します。このように、量子化は、コンピュータが情報を処理・保存する上で欠かせない技術となっています。量子化ビット数を適切に設定することで、データの精度と容量のバランスを取ることが重要です。
深層学習

量子化:モデルを軽くする技術

機械学習の世界では、モデルが大きくなればなるほど、より多くの計算資源が必要になります。高性能な計算機が必要になるだけでなく、学習や推論にかかる時間も長くなります。そこで、モデルのサイズを小さく軽くする技術である量子化が注目されています。 量子化とは、モデル内部で使われている数値の表現方法を変えることで、必要な記憶容量を減らす技術です。例えば、ある数値を小数点以下4桁まで細かく記録していたとします。量子化では、この数値を小数点以下2桁までに丸めるなど、表現の精度を意図的に落とします。写真に例えると、高画質の写真を少し画質を落として保存するようなものです。元の情報と全く同じではないものの、見た目に大きな違いはなく、ファイルサイズは小さくなります。 量子化には様々な方法があり、大きく分けて2つの種類があります。一つは、学習済みのモデルに対して適用する手法です。この手法は、既に学習を終えたモデルに後から量子化を適用するため、手軽に利用できるという利点があります。もう一つは、学習の過程で最初から量子化を組み込む手法です。こちらは、モデルの精度を高く保ちながら量子化を行うことができるという利点があります。 量子化によってモデルの表現能力は少し低下する可能性がありますが、多くの場合、その影響はわずかです。むしろ、モデルのサイズが小さくなることで、計算機の記憶容量を節約できる、処理速度が向上するといった利点の方が大きい場合が多いです。特に、スマートフォンや家電製品のような限られた計算資源しかない環境では、量子化は非常に有効な技術と言えます。そのため、近年では、様々な機械学習の場面で量子化が活用されています。