ベクトル自己回帰モデル入門
ベクトル自己回帰モデル、略してVARモデルは、複数の時系列データが互いにどのように影響し合っているかを分析するための統計モデルです。たとえば、ある国の経済活動を分析したいとしましょう。経済活動は、物価、金利、雇用率、株価など、様々な要素が複雑に絡み合って変化します。これらの要素は単独で変動するのではなく、互いに影響を与え合いながら動いています。このような複数の時系列データ間の関係性を捉えることができるのが、VARモデルの強みです。
VARモデルは、過去のデータに基づいて将来の値を予測することができます。例えば、過去の物価、金利、雇用率、株価のデータを使って、将来のこれらの値を予測することができます。ただし、VARモデルは単なる予測モデルではありません。各要素が他の要素にどのように影響を与えるかを分析することもできます。例えば、金利の変化が株価にどのような影響を与えるか、あるいは物価の上昇が雇用率にどのような影響を与えるかを分析することができます。
VARモデルを使うことで、複数の時系列データ間の複雑な関係性を解き明かすことができます。これは、経済政策の立案に役立ちます。例えば、政府が金利を下げる政策を実施した場合、その政策が物価や雇用率にどのような影響を与えるかを予測することができます。また、金融市場の予測にも役立ちます。例えば、過去の株価や金利のデータから将来の株価を予測することができます。
VARモデルは、経済学だけでなく、様々な分野で応用されています。例えば、マーケティングの分野では、広告支出と売上高の関係性を分析するために使われています。また、工学の分野では、機械の振動や温度変化の関係性を分析するために使われています。このように、VARモデルは、複数の時系列データ間の関係性を分析するための強力なツールと言えるでしょう。