人工知能の限界:フレーム問題とは
機械に知恵を持たせる、人工知能の研究では、どうしても乗り越えられない大きな壁があります。それが「枠組み問題」と呼ばれるものです。この難題は、人工知能が持つ限られた処理能力と、現実世界が持つ無限に複雑な状況との間の大きな差から生まれます。
たとえば、ロボットに部屋を掃除させたいとします。ロボットは、掃除機をかけたり、ゴミを拾ったりといった掃除に必要な行動は理解できます。しかし、現実世界では、予期せぬ出来事が次々と起こります。例えば、掃除中に電話が鳴ったり、子供が急に部屋に入ってきたり、ペットがじゃれてきたりします。人間であれば、これらの出来事に柔軟に対応できます。電話に出たり、子供に注意を促したり、ペットを優しくあやしたりと、状況に応じて適切な行動を取ることができるでしょう。
しかし、人工知能にとっては、このような予期せぬ出来事への対応は非常に難しい問題です。あらかじめすべての可能性を想定して、対応策をプログラムしておくことは不可能です。なぜなら、現実世界で起こりうる出来事は無限に存在するからです。もし、すべての可能性に対応しようとすれば、膨大な量の情報を処理しなければならず、人工知能の処理能力ではとても追いつきません。また、ある出来事が他の出来事に影響を与える連鎖反応も考慮しなければならず、問題の複雑さはさらに増大します。
この枠組み問題は、人工知能が真の意味で賢くなるためには、状況に応じて必要な情報を選択し、不要な情報を無視する能力が不可欠であることを示しています。人間のように、目の前の状況を理解し、適切な行動を判断するためには、どのような情報が重要で、どのような情報を無視すれば良いのかを瞬時に見極める必要があるのです。この情報の取捨選択こそが、人工知能研究における大きな壁となっているのです。