ランダムイレーシング:画像認識の精度向上
画像認識の分野では、学習に用いる画像データを増やすことで認識精度を向上させる、データ拡張という手法がよく使われます。ランダムイレーシングもこのデータ拡張の一つであり、画像に部分的な欠損を作り出すことで、モデルの頑健性を高めることを目的としています。
この手法は、まるで子供がいたずら書きで絵の一部を塗りつぶすように、画像の一部分を四角形で覆い隠します。この覆い隠す四角形は、大きさも位置も様々です。覆い隠す四角形の大きさは画像全体に対してランダムに決定され、時には小さく、時には大きく設定されます。また、覆い隠す位置も画像のどこであっても構いません。中央付近に配置されることもあれば、端の方に寄ることもあります。
そして、この四角形で覆われた部分の画素の値は、ランダムな値に置き換えられます。つまり、隠された部分は単一の色で塗りつぶされるのではなく、様々な色の点で構成された、一見ノイズのように見える状態になるのです。
このように画像の一部を意図的に欠損させることで、何が起きるのでしょうか。モデルは、完全な情報が得られない状況でも、画像に写っているものを正しく認識することを強いられます。部分的に情報が欠けていても、残された情報から全体像を推測し、正しい答えを導き出す訓練を積むわけです。この訓練を通して、モデルは特定の部分的な特徴に過度に依存するのではなく、画像全体の文脈を理解する能力を身につけるのです。結果として、多少の情報が欠損していても、あるいは被写体の一部が隠れていても、正しく認識できる、より頑健なモデルが完成します。