デュエリングネットワーク:強化学習の進化
強化学習とは、試行錯誤を通じて行動の良し悪しを学習する枠組みのことです。この学習において、行動の価値を適切に評価することは非常に重要です。従来の深層強化学習の手法では、状態行動価値関数、よくQ関数と呼ばれるものが用いられてきました。Q関数は、ある状態において、ある行動をとったときに、将来どれだけの報酬が得られるかを予測する関数です。
しかし、Q関数を直接学習させる方法には、状態と行動の価値が混在しているという問題がありました。例えば、ある状態自体が非常に良い状態であれば、その状態においてどのような行動をとっても、高い報酬が期待できます。逆に、ある状態自体が非常に悪い状態であれば、どんな行動をとっても良い報酬は期待できません。このような状況では、Q関数は状態の価値を反映してしまい、個々の行動の良し悪しを適切に評価することが難しくなります。
この問題を解決するために、デュエリングネットワークという手法が提案されました。デュエリングネットワークでは、Q関数を状態価値関数とアドバンテージ関数という二つの関数に分解します。状態価値関数は、ある状態にいること自体の価値を表します。一方、アドバンテージ関数は、ある状態において、ある行動をとることによる追加の価値、つまり他の行動と比べてどれくらい優れているかを表します。
具体的には、ある状態における各行動のアドバンテージ関数の値を計算し、そこから平均値を引いたものを用います。こうすることで、状態の価値と行動の価値を分離することができます。状態が良いか悪いかに関わらず、それぞれの行動の相対的な価値を評価できるようになるため、より効率的な学習が可能になります。結果として、複雑な環境においても、より適切な行動を選択できるようになります。