音色の秘密:スペクトル包絡
私たちは、身の回りで様々な音を耳にしています。小鳥のさえずり、風のそよぎ、楽器の音色、人の話し声など、実に様々です。これらの音は、「高さ(高低)」、「長さ(長短)」、「強さ(強弱)」、「音色」という4つの要素で区別することができます。この中で、音の印象を大きく左右するのが「音色」です。
例えば、同じ高さの「ド」の音を、ピアノ、バイオリン、フルートで演奏したとします。どれも「ド」の音であり、同じ長さ、同じ強さで演奏したとしても、それぞれの楽器で異なる音として聞こえます。この違いこそが音色の違いです。また、同じ人でさえ、話すときと歌うときでは声色が違いますし、異なる人が同じ歌を歌っても、それぞれに個性があります。これも音色の違いによるものです。
では、この音色の違いは一体どのようにして生まれるのでしょうか。音は空気の振動によって伝わりますが、この振動は単純なものではなく、様々な周波数の波が組み合わさってできています。この周波数の成分とその強さの分布を「スペクトル」と言います。そして、このスペクトルの形、つまりどの周波数がどれくらいの強さで含まれているかという全体的な傾向を「スペクトル包絡」と呼びます。このスペクトル包絡こそが、音色の違いを生み出す重要な要素なのです。同じ「ド」の音であっても、楽器によってスペクトル包絡が異なり、それが音色の違いとなって私たちの耳に届くのです。つまり、スペクトル包絡は音の個性とも言えるでしょう。