コンピュータアーキテクチャ

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ハードウエア

ライトバック方式:高速化の鍵

計算機の処理速度を高める上で、記憶装置の役割は大変重要です。情報を一時的に保管する場所として、主記憶装置とキャッシュメモリがあります。主記憶装置は容量が大きい反面、読み書きの速度が遅いという弱点があります。一方、キャッシュメモリは容量は小さいものの、読み書きの速度が非常に速いため、処理速度の向上に役立ちます。この二つの記憶装置を効率的に使う方法の一つが、ライトバック方式です。 ライトバック方式では、計算機が情報を書き込む際、まずキャッシュメモリに書き込みます。そして、すぐに次の処理に移ります。主記憶装置への書き込みは後回しにするのです。これは、喫茶店で注文した品物がすぐに出るように、先に注文を受けてキッチンで調理を始め、準備ができたら客席に届けるようなものです。キッチンがキャッシュメモリ、客席が主記憶装置、注文が書き込み処理に当たります。 では、いつ主記憶装置に書き込むのでしょうか?それは、キャッシュメモリがいっぱいになった時や、システムが定期的に行う更新作業の時などです。喫茶店の例で言えば、注文がたくさん入ってキッチンが一杯になった時、あるいは、お店の営業時間が終わり、一日の売り上げを集計する時などに相当します。 この方式の利点は、計算機が主記憶装置への書き込みが終わるのを待つ必要がないことです。喫茶店の店員が、注文した品物を客に届けるまで次の注文を取らないと、お店の回転が悪くなってしまいます。ライトバック方式は、店員が注文を受けたらすぐに次の客の対応ができるようにすることで、全体的な処理速度の向上を実現しています。つまり、計算機の処理能力を最大限に引き出すための工夫と言えるでしょう。
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ライトスルー方式でデータ整合性を確保

計算機の記憶の仕組みには、階層構造があります。処理装置に近いほど高速で容量の小さい記憶装置、遠いほど低速で大容量の記憶装置が配置されています。この階層構造において、情報を書き込む方法の一つに、ライトスルー方式というものがあります。ライトスルー方式とは、処理装置が最も近い記憶装置(キャッシュ記憶装置)に情報を書き込むと同時に、主記憶装置にも同じ情報を書き込む方式です。 キャッシュ記憶装置は処理装置の近くに配置されているため、情報の読み書きが高速です。しかし、容量が小さいため、全ての情報を格納できません。一方、主記憶装置は大容量ですが、キャッシュ記憶装置に比べて低速です。ライトスルー方式では、情報を書き込むたびに主記憶装置にも書き込むため、書き込み動作に時間がかかります。処理装置は主記憶装置への書き込みが完了するまで待機する必要があるため、全体の処理速度が低下する可能性があります。 しかし、ライトスルー方式には大きな利点があります。キャッシュ記憶装置と主記憶装置の内容が常に一致しているため、情報の整合性が保証される点です。もし、処理装置が突然停止した場合でも、主記憶装置には最新の情報が保存されているため、情報の損失を防ぐことができます。 情報を書き込む度に主記憶装置にアクセスするため、書き込み速度は低下しますが、情報の整合性を重視するシステムでは、この欠点は許容されます。ライトスルー方式は、データの一貫性が求められる場面、例えば金融機関のシステムやデータベース管理システムなどで採用されています。処理速度よりも情報の整合性を優先する場合に有効な方式と言えるでしょう。
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密結合マルチプロセッサで処理高速化

複数の処理装置を使った仕組みで、作業の効率を上げる方法について説明します。以前は、計算を行う装置が一つしかありませんでした。そのため、複雑な計算や大量のデータを扱う場合、処理が終わるまでに長い時間がかかっていました。一つの装置に負担が集中し、全体の処理速度が遅くなることもありました。このような問題を解決するために、複数の処理装置を同時に使う方法が考えられました。 密結合マルチプロセッサと呼ばれるこの仕組みでは、複数の処理装置が一つの記憶装置を共有し、一つの制御システムによって管理されます。複数の処理装置を使うことで、作業を分担し、同時に処理を進めることができます。例えば、一つの装置が計算の一部を行い、別の装置が別の部分を同時に計算することで、全体の処理速度を上げることができます。これは、料理を複数人で分担して作る様子に似ています。一人で作ると時間がかかる料理も、複数人で分担すれば早く完成します。 この仕組みを使うことで、たくさんの計算やデータ処理が必要な場合でも、高速でスムーズに作業を進めることができます。例えば、天気予報や科学技術計算など、膨大な量のデータを処理する必要がある場面で威力を発揮します。また、複数の利用者が同時にシステムを使う場合でも、それぞれの処理を効率良く分担できるため、快適な操作環境を提供できます。これにより、処理速度の向上だけでなく、システム全体の安定性も向上させることが期待できます。まるで、複数の窓口がある郵便局のように、多くの人が同時にサービスを受けられるため、待ち時間が短縮され、スムーズなサービス提供が可能になります。
ハードウエア

高速化の鍵!フルアソシエイティブ方式

計算機の処理を速くするためには、演算装置と主記憶装置の間の速度の差を小さくすることが重要です。この速度差は、計算機の性能を大きく左右するボトルネックとなっています。主記憶装置は情報を保存する場所ですが、演算装置に比べると動作が遅いという問題があります。そこで、この問題を解決するために、演算装置と主記憶装置の間に、高速な小さな記憶装置であるキャッシュメモリを配置します。キャッシュメモリは主記憶装置よりも容量は小さいものの、アクセス速度が非常に速いため、演算装置が必要とする情報を一時的に保存しておくことで、処理速度を向上させることができます。 キャッシュメモリには様々な種類がありますが、その中で、情報の置き場所を自由に決められる方式をフルアソシエイティブ方式と呼びます。この方式では、情報はキャッシュメモリのどこにでも保存することができます。あたかも、広大な図書館にある本を、どの棚にも置けるようなものです。必要な情報を検索する際には、キャッシュメモリ全体を同時に探し、該当する情報を見つけ出します。このため、情報が見つかれば、非常に速く読み出すことが可能です。 しかし、キャッシュメモリ全体を同時に検索するということは、検索回路が複雑になり、コストも高くなるという欠点も持ち合わせています。さらに、検索回路が複雑になるため、キャッシュメモリの容量を大きくすることが難しいという問題もあります。まるで、図書館の本を全て同時に探すようなものですから、図書館が大きくなればなるほど、探すのが大変になるのと同じです。フルアソシエイティブ方式は、速度は速いものの、コストと容量の面で不利になります。そのため、小規模なキャッシュメモリや、速度が特に重要な場面で使用されることが多いです。他の方式と比較しながら、それぞれの長所と短所を理解することが大切です。
アルゴリズム

パイプライン制御で処理を高速化

計算機の中枢である処理装置は、様々な命令を次々と実行することで仕事をこなします。その命令処理のやり方には様々な工夫があり、パイプライン制御もその一つです。パイプライン制御とは、複数の命令をまるで流れ作業のように、同時並行で処理する技術のことを指します。 例として、工場の組み立てラインを想像してみましょう。製品が完成するまでには、部品の取り付け、塗装、検査など、様々な工程が必要です。もし、一つの工程が完了するまで次の工程に進めない、昔ながらのやり方だとどうなるでしょうか。部品の取り付けが終わるまで塗装工程は待機し、塗装が終わるまで検査工程も待機しなければなりません。各工程は前の工程が終わるまで手持ち無沙汰になってしまうのです。 パイプライン制御では、この待ち時間を有効活用します。各工程を同時並行で進める工夫を取り入れるのです。部品の取り付けが終わった製品はすぐに塗装工程に進み、それと同時に、別の製品の部品取り付けを行うことができます。まるで、流れ作業のように、各工程が途切れることなく稼働し続けるのです。 このように、複数の命令を同時に処理することで、全体の処理時間を大幅に短縮することが可能になります。一つの命令を処理するのにかかる時間は変わらなくても、複数の命令を同時進行で処理することで、全体としての処理能力は向上するのです。これは、計算機の性能向上に大きく貢献しており、現在の高速な計算機を実現する上で欠かせない技術となっています。パイプライン制御によって、私たちは快適に計算機を利用できていると言えるでしょう。