フィルターバブル:思考の偏りを防ぐ
情報があふれる現代社会。いつでもどこでも、多種多様な情報を入手できるようになりました。まるで広大な海のような情報の中から、欲しい情報を選び取ることは簡単なように思えます。しかし、実際には私たちはその海の全体像を見ているわけではありません。まるで泡の中に包まれているかのように、自分に都合の良い情報ばかりが目に入り、他の情報は遮断されていることがあります。これが、情報の世界で「泡」と例えられるゆえんです。
この現象は「情報の泡」または「フィルターバブル」と呼ばれ、2011年にインターネット活動家のイーライ・パリサー氏によって提唱されました。インターネットで情報を探すとき、私たちは検索サイトを利用したり、ソーシャルメディアで情報を得たりすることが多いでしょう。これらのサービスは、私たちの過去の検索履歴や閲覧履歴、さらには「いいね!」などの反応といった行動に基づいて、一人ひとりに合わせた情報を表示する仕組みを持っています。例えば、ある特定の商品の広告を頻繁に見るようになった、特定の分野のニュース記事ばかりが表示されるようになった、といった経験はありませんか?それは、あなたが過去にその商品や分野に興味を示した行動をシステムが記憶し、それに基づいて情報を表示しているからです。
この仕組みにより、自分に合った情報に効率よくアクセスできるという利点がある一方、自分とは異なる意見や考え方、新たな発見の機会が失われている可能性も指摘されています。泡の中に閉じ込められた状態では、自分の知っている情報だけを正しいと思い込み、多角的な視点を持つことが難しくなります。異なる意見に触れることで視野が広がり、より深い理解につながることもあるはずです。情報社会を生きる上で、情報の泡という現象を理解し、自ら情報源を多様化させるなど、主体的・積極的に情報と向き合うことが大切です。