画像認識の源流、ネオコグニトロン
計算機に人間と同じように画像を理解させることは、長年の夢であり、難しい課題でした。初期の画像認識の仕組みは、単純な丸や四角、あるいは決まった模様を見分けるのが精一杯で、写真のような複雑な画像を理解するにはほど遠いものでした。
当時の技術では、画像から大切な特徴を取り出す方法が限られていました。例えば、画像の明るさや色の変化を数値として捉えることはできましたが、それが一体何を意味するのかを理解させることは難しかったのです。また、画像に少しでもノイズ(画像の乱れ)が入ったり、対象が少し形を変えたりするだけで、正しく認識できなくなるという弱点もありました。そのため、手書きの文字を判読するといった、限られた用途でしか実用化されていませんでした。
このような状況を打開するために、全く新しい発想に基づいた画像認識の方法が求められていました。そして、日本の福島邦彦氏の発明した「ネオコグニトロン」が、その突破口を開いたのです。ネオコグニトロンは、人間の目がどのようにものを見ているのか、その仕組みをヒントに作られました。従来の画像認識の仕組みとは全く異なる方法で、コンピュータに画像を認識させることを目指したのです。これは、画像認識の分野における画期的な出来事であり、その後の発展に大きく貢献することになります。福島氏の着想は、多くの研究者に影響を与え、より高度な画像認識技術の開発へとつながっていくのです。