インスタンスセグメンテーションとは
画像を理解する技術は、近年、目覚ましい発展を遂げてきました。中でも、「もの」を判別するだけではなく、一つ一つのものの形まで細かく認識する技術は、特に注目を集めています。これを「事例分割」と呼びます。これは、写真に写るたくさんの「もの」を、一つ一つ丁寧に区別して、それぞれに名前を付けるような作業です。まるで、写真の中に写る全てのものに、名前ラベルを貼り付けていくようなイメージです。
例えば、たくさんのリンゴが山積みになっている様子を写真に撮ったとします。普通の画像認識技術では、「リンゴ」という種類は認識できても、どのリンゴがどのリンゴかまでは判別できません。しかし、事例分割を使えば、重なり合っているリンゴも一つ一つ区別し、「リンゴ1」「リンゴ2」「リンゴ3」……と、それぞれに名前を付けることができます。
この技術のすごいところは、ものの種類だけでなく、一つ一つのものの形まで正確に捉えられる点です。リンゴが重なっていても、隠れている部分の形まで推測して、それぞれのリンゴの輪郭を正確に切り抜くことができます。まるで、職人が丁寧にリンゴを一つずつ切り分けていくかのような精密さです。
この技術は、様々な分野で応用が期待されています。例えば、自動運転の分野では、周囲の車や歩行者、信号などを正確に認識するために必要不可欠です。また、医療分野では、レントゲン写真やCT画像から、腫瘍などの病変部分を正確に特定するために役立ちます。さらに、工場の自動化やロボット制御など、事例分割は、私たちの生活をより便利で安全なものにするための、重要な役割を担っていると言えるでしょう。