フォルマント:音色の秘密
音は、空気が震えることで生まれます。この空気の震え方は、波のように表現することができます。池に石を投げ込んだ時に広がる波紋のように、音も波の形で伝わっていきます。ただし、音の波は、単純な波紋とは異なり、複雑な形をしていることが多く、様々な大きさの波が重なり合っています。
この複雑な波を詳しく見ていくと、様々な速さの震えが混ざり合っていることが分かります。この震える速さを「周波数」と呼び、単位はヘルツ(回/秒)で表します。1秒間に何回空気が震えるかを表しているのです。音はこの様々な周波数の成分が組み合わさってできています。それぞれの周波数の成分がどれくらいの強さを持っているかを調べることで、音の高さや音色の違いが分かります。
音の高さは、最も低い周波数の成分「基本周波数」によって決まります。基本周波数が高い音は高く聞こえ、低い音は低く聞こえます。例えば、太鼓の音は基本周波数が低いため低く聞こえ、笛の音は基本周波数が高いため高く聞こえます。
同じ高さの音であっても、楽器や人の声によって音色が違うのはなぜでしょうか。これは、「倍音」と呼ばれる周波数成分が関係しています。倍音とは、基本周波数の整数倍の周波数を持つ成分のことです。例えば、基本周波数が100ヘルツの音の場合、200ヘルツ、300ヘルツ、400ヘルツ…といった周波数の成分が倍音となります。それぞれの倍音がどれくらいの強さを持っているかによって、音色が変わってきます。例えば、フルートの音は倍音が少なく澄んだ音色に聞こえますが、トランペットの音は倍音が多く華やかな音色に聞こえます。
この倍音の強さの分布をグラフで表したものを「スペクトル包絡」と言います。スペクトル包絡を見ると、特定の周波数帯域で音が強くなっている部分が見られることがあります。この強くなっている部分を「フォルマント」と呼びます。フォルマントは、特に人の声の音色を特徴づける重要な要素です。