監査の要、インタビュー法を紐解く

監査の要、インタビュー法を紐解く

はじめに

組織の情報システムが適切に運用され、安全に管理されているかを確かめるための仕組み、それがシステム監査です。システム監査は、組織の信頼性を守る上で欠かせない役割を担っています。このシステム監査を行う上で、情報収集は監査の成否を左右すると言っても過言ではありません。様々な情報収集方法の中でも、関係者への直接聞き取り、すなわちインタビュー法は特に重要です。

インタビュー法は、書類だけでは見えてこない情報を引き出す力を持っています。システムの現状把握に役立つだけでなく、システムに関わる人々の意識や考え方を理解するのにも役立ちます。例えば、日々のシステム運用状況や、問題発生時の対応手順、内部統制の状況などは、実際に運用している担当者に話を聞くことで初めて見えてくる部分が多くあります。マニュアルや報告書に書かれた内容と、現場の実態が異なるケースも少なくありません。インタビューを通して両者のずれを明らかにすることで、より正確で詳細な監査結果を得ることが可能になります。また、単に事実確認をするだけでなく、担当者の生の声を聞くことで、潜在的なリスクや改善点が見えてくることもあります。

インタビューは、準備段階から綿密な計画が必要です。事前に十分な資料調査を行い、質問内容を検討することで、限られた時間の中で効果的に情報を引き出すことができます。さらに、インタビュー時の言葉遣いや態度にも配慮が必要です。相手との信頼関係を築き、リラックスした雰囲気を作ることで、率直な意見や隠れた問題点を聞き出すことができます。インタビューで得られた情報は、整理・分析し、監査報告書に適切に反映させることが重要です。

本稿では、システム監査におけるインタビュー法について、その目的や具体的な進め方、注意点などを詳しく解説していきます。より良いシステム監査の実施に向けて、インタビュー法を効果的に活用するための知識と技術を深めていきましょう。

インタビュー法の意義

組織における情報システムの監査において、聞き取り調査は非常に重要な役割を担っています。なぜなら、公式文書や記録からは得られない、現場の実態を把握できるからです。システムの運用手順書は、理想的な運用方法を示したものですが、実際の現場では、手順書に記載されていない独自の運用方法や、暗黙のルールが存在することがあります。例えば、システムの負荷を軽減するために、特定の時間帯には一部の機能を停止するといった手順書にない運用が現場で行われているかもしれません。あるいは、パスワードの管理方法など、セキュリティに関する規則が徹底されていない可能性もあります。このような公式な記録には残っていない情報を収集することで、システムの脆弱性や、内部統制上の問題点を発見できる可能性が高まります。

また、聞き取り調査は、関係者の意識や態度を把握する上でも有効な手段です。システムのセキュリティ対策に対する意識の高さや、内部統制の遵守状況などは、書類上では判断できません。聞き取り調査を通じて、担当者がセキュリティ対策の重要性をどの程度認識しているのか、内部統制の規則をきちんと守ろうという意識を持っているのかを直接確認することで、組織全体のセキュリティ意識や統制環境を評価することができます。さらに、聞き取り調査では、システムに対する要望や不満、改善点なども収集できます。システムを利用する現場の担当者から直接意見を聞くことで、システムの使い勝手や機能性に関する問題点を把握し、今後のシステム改善に役立てることができます。このように、聞き取り調査で得られた情報は、監査結果の評価だけでなく、今後のシステム改善策を検討する上でも、非常に重要な役割を果たすのです。

準備段階の重要性

どのような物事を行うにしても、準備段階は成功への重要な鍵となります。特に、複数の人員が関わり、限られた時間内で行う必要がある業務においては、綿密な準備が不可欠です。例えば、複数の人から話を聞き、必要な情報を集める面談のような場合を考えてみましょう。

まず、何のために面談を行うのか、その目的を明確にすることが大切です。漠然と話を聞くのではなく、何を知りたいのか、どのような情報を得たいのかを具体的に決めておく必要があります。目的が定まれば、誰に話を聞けば良いのかが見えてきます。面談の相手を選ぶ際には、その人がどのような仕事をしているのか、どの程度まで情報を持っているのかを事前に調べておきましょう。相手をよく理解することで、より的確な質問を準備することができます。

質問の内容も事前に準備しておくことが重要です。面談の目的を達成するために必要な情報を漏れなく聞き出せるよう、質問事項をリスト化しておきましょう。単に質問事項を並べるだけでなく、どのような順番で質問するのが適切か、相手に分かりやすく伝えるにはどのような言葉遣いをすれば良いのかなど、細かい点まで気を配り準備することで、面談はスムーズに進み、必要な情報も確実に得られるでしょう。限られた時間の中で最大限の効果を得るためには、事前の準備に時間をかけることが重要です。準備を怠ると、面談中に何を聞けば良いのか分からなくなったり、重要な情報を聞き逃したりする可能性があります。反対に、しっかりと準備しておけば、落ち着いて面談に臨むことができ、有益な情報を得られる可能性が高まります。まさに、準備が成功の秘訣と言えるでしょう。

実際の手順と心構え

対話による聞き取り調査を円滑に進めるには、入念な準備と適切な実施手順、そして真摯な心構えが欠かせません。

まずは、聞き取り調査の開始にあたり、相手に目的と大まかな流れを丁寧に説明し、協力を得られるよう努めましょう。その際、相手が安心して話せる雰囲気作りを心がけることが大切です。あらかじめ用意しておいた質問事項に基づいて質問を進めていきますが、相手の状況や回答に応じて、臨機応変に質問内容を調整することも重要です。例えば、相手の言葉に詰まりや戸惑いが見られた場合は、少し話題を変えたり、具体的な例を挙げて質問を言い換えたりするなど、相手のペースに合わせた対応を心がけましょう。

相手の回答は注意深く傾聴し、重要な点はメモを取りながら、必要に応じて追加の質問をして、より詳しい情報を引き出します。単に言葉の内容だけでなく、相手の表情や仕草、声のトーンなどにも注意を払い、言葉の裏に隠された本音や感情を読み取る努力も大切です。

聞き取り調査中は、常に相手に敬意を払い、誠実な態度で接しましょう。相手の話に共感したり、適度に相槌を打ったりすることで、信頼関係を築き、より率直な意見や考えを聞き出すことができます。

聞き取り調査が終了したら、記憶が新しいうちに回答内容を記録し、整理しておきましょう。録音した内容を書き起こしたり、メモを元に詳細な記録を作成したりすることで、正確な情報を保存し、後々の分析に役立てることができます。聞き取り調査を通して得られた貴重な情報は、今後の活動に活かしていきましょう。

まとめ

組織の仕組みや情報を取り扱う手順を確かめるための調査の中で、聞き取りをすることは大切な方法の一つです。書類などの記録には残っていない、実際に働いている人たちの考えや行動を知るために役立ちます。他の方法では得られない、生の情報に触れることができるからです。

聞き取りをうまく行うためには、何のために聞き取りをするのか、誰に話を聞くのか、どんな質問をするのかなどを事前にしっかり決めておく必要があります。目的がはっきりしていれば、適切な質問内容を準備することができますし、誰に話を聞けば必要な情報が得られるのかを判断することができます。綿密な準備は、聞き取りを成功させるための重要な鍵となります。

聞き取りをする当日も、いくつか注意すべき点があります。相手に敬意を払い、真摯な態度で接することは、信頼関係を築く上で非常に大切です。相手に安心して話してもらえる雰囲気を作ることで、より多くの情報を得ることができるでしょう。また、質問は分かりやすい言葉で、一つずつ丁寧に尋ねることも重要です。質問の意図が相手にきちんと伝わらないと、正確な情報を得ることが難しくなります。さらに、相手の言葉にしっかりと耳を傾け、共感しながら話を聞くことで、相手はより深い話をしてくれるようになるでしょう。

このように、聞き取りという方法は、準備と当日の対応を適切に行うことで、調査の質を大きく向上させることができます。そして、集めた情報を分析することで、組織の情報システムの安全性を高め、信頼できるものにしていくことができるのです。

倫理的な配慮

話し合いをする際には、相手への思いやりを何よりも大切にする必要があります。話し合いの目的が何であれ、相手の人格や立場を尊重し、相手の気持ちを理解しようと努めることが重要です。特に、個人の秘密や大切な情報を取り扱う際には、細心の注意を払わなければなりません。

話し合いで得られた内容や、相手が話してくれた内容は、許可なく他の人に話してはいけません。情報の管理を徹底することは、信頼関係を築く上で不可欠です。また、話し合いの時間や場所についても、相手に負担がかからないように配慮する必要があります。長時間の話し合いや、相手に都合の悪い場所での実施は避けるべきです。話し合いを始める前に、これらの点について相手に丁寧に説明し、理解と協力を得ることが大切です。

相手のことを考えずに話し合いを進めてしまうと、相手との信頼関係が崩れ、本音を聞き出せなくなる可能性があります。例えば、プライベートな質問を強要したり、相手の意見を否定したりする行為は、相手を傷つけ、話し合いを阻害する要因となります。また、無理やり長時間話し合いを続けたり、相手の都合を無視した時間に設定したりするのも、相手への配慮が欠けていると言えます。このような配慮不足は、相手との関係を悪化させるだけでなく、話し合いの目的を達成することも難しくします。

常に相手の立場に立って考え、責任ある行動を心がけることで、円滑なコミュニケーションを図り、有益な情報を得ることができるでしょう。信頼関係を築くことが、良い話し合いを実現するための第一歩です。