ホールドアウト検証と交差検証
AIを知りたい
先生、ホールドアウト検証とk分割交差検証の違いがよくわからないのですが、教えていただけますか?
AIエンジニア
いいですよ。そうですね、データ全体を訓練用とテスト用に一度だけ分けて検証するのがホールドアウト検証です。k分割交差検証は、データをk個に分割して、そのうち1つをテスト用、残りを訓練用として検証を行います。これをk回繰り返すことで、全てのデータが1回ずつテスト用に使われることになります。
AIを知りたい
なるほど。つまり、ホールドアウト検証は一度だけの分割で、k分割交差検証は複数回分割して検証するということですね。でも、なぜ複数回も検証する必要があるのでしょうか?
AIエンジニア
それは、1回だけの分割だと、たまたま選んだデータの偏りで結果が変わってしまう可能性があるからです。k分割交差検証のように複数回検証することで、偏りの影響を減らし、より信頼性の高い結果を得ることができるのです。
ホールドアウト検証とは。
人工知能で使われる言葉である「ホールドアウト検証」について説明します。この検証方法は、全てのデータを学習用データとテスト用データに分けます。この分け方を使った検証方法をホールドアウト検証と言います。学習用データとテスト用データへの分割を何度も繰り返して、それぞれで学習と評価を行う方法は、k分割交差検証と呼ばれています。
ホールドアウト検証とは
機械学習の分野では、作った模型がどれくらいうまく働くのかを確かめることがとても大切です。そのための方法の一つに、ホールドアウト検証というものがあります。これは、持っているデータを二つの組に分けて、模型の良し悪しを判断する方法です。
まず、集めたデータを大きな塊と小さな塊に分けます。大きな塊は訓練データと呼ばれ、模型に学習させるためのデータです。ちょうど、学校の授業で教科書を使って勉強するようなものです。模型はこの訓練データを使って、データの中に潜むパターンや規則を見つけ出します。
もう一方の小さな塊はテストデータと呼ばれ、これは模型がどれだけきちんと学習できたかをテストするためのデータです。学校のテストと同じように、訓練データでは見たことのない問題を解かせて、その正答率で模型の性能を測ります。模型は訓練データを使って学習しますが、テストデータは一切見ることができません。これにより、未知のデータに対する模型の性能を公平に評価することができます。
このホールドアウト検証は、分かりやすく簡単に実行できるという大きな利点があります。しかし、データの分け方によって結果が変わってしまうことがあるので、注意が必要です。特に、データの数が少ない場合は、分け方による影響が大きくなってしまい、正しい結果が得られない可能性があります。例えば、訓練データにたまたま特定の特徴を持つデータばかりが集まってしまうと、模型はその特徴に偏って学習してしまい、本来の性能よりも良く見えてしまうことがあります。
そのため、ホールドアウト検証を行う際は、データの分け方を工夫することが重要です。例えば、データ全体の特徴を反映するように、均等にデータを分けるなどの工夫が必要です。そうすることで、より信頼性の高い結果を得ることができます。
交差検証の必要性
機械学習モデルを作る目的は、未知のデータに対してどれくらいうまく働くか、つまり汎化性能を測ることです。この汎化性能を正しく測るために、交差検証という方法がよく使われます。 単純にデータを訓練用とテスト用に一度だけ分割するホールドアウト検証という方法もありますが、これはデータの分割の仕方によって結果が大きく変わってしまうことがあります。たまたま訓練データによく合っていて、テストデータには合わないモデルができてしまうと、本当の性能よりも良く見えてしまうかもしれませんし、逆もまたしかりです。
そこで、交差検証が登場します。交差検証では、データを複数グループに分け、各グループを順番にテストデータとして使います。例えば、5つのグループに分割すると、一つのグループをテストデータ、残りの四つのグループを訓練データとしてモデルを学習させます。これを五回繰り返すことで、全てのグループが一度ずつテストデータになります。それぞれのグループでテストした結果を平均することで、最終的なモデルの性能を評価します。
このようにすることで、一度だけの分割による偏りを減らすことができます。ホールドアウト検証のように、たまたま分割の仕方が悪くて性能が悪く出てしまう、あるいは良く出てしまう、といった事態を避けることができます。訓練データとテストデータを何度も入れ替えることで、様々なデータの組み合わせでモデルの性能を測ることができるので、より信頼できる結果を得ることができます。つまり、未知のデータにどれくらい対応できるのか、というモデルの真の実力をより正確に知ることができるのです。これは、より良いモデルを選ぶため、そして最終的に実用的なモデルを作る上で非常に大切です。
検証方法 | 説明 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
ホールドアウト検証 | データを訓練用とテスト用に一度だけ分割する。 | 単純でわかりやすい。計算コストが低い。 | データの分割の仕方によって結果が大きく変わる可能性がある。汎化性能の評価が不安定。 |
交差検証 | データを複数グループに分け、各グループを順番にテストデータとして使用する。 | データの分割による偏りを減らせる。汎化性能の評価がより安定する。 | ホールドアウト検証に比べて計算コストが高い。 |
分割数の決め方
機械学習の分野では、モデルの性能を正しく評価するために、交差検証という手法がよく使われます。交差検証では、手持ちのデータをいくつかのグループに分け、あるグループを検証用データとして、残りのグループを学習用データとしてモデルの訓練を行います。このとき、いくつのグループにデータを分割するのかは重要な要素であり、分割数をkとすると、k分割交差検証と呼ばれます。
一般的に、kの値としては5または10がよく選ばれます。kの値を小さくすると、例えば2や3のようにすると、計算の手間は少なくなりますが、検証の精度は低くなる傾向があります。これは、学習に使われるデータの量が少なくなり、モデルがデータの特徴を十分に捉えられないためです。逆に、kの値を大きくすると、例えば20や30のようにすると、検証の精度は高くなりますが、計算の手間は多くなります。学習に使われるデータの量が増え、モデルがデータの特徴をより正確に捉えられるようになるため、精度は向上しますが、その分計算に時間がかかります。
kの値をデータ数と同じにした場合、特別な交差検証の方法になります。これは、ある一つのデータだけを検証用データとして残し、それ以外の全てのデータを学習用データとして使う方法で、これを一つ抜き交差検証と呼びます。一つ抜き交差検証は、検証の精度は非常に高いですが、データごとにモデルの学習を行う必要があるため、計算の手間が膨大になります。そのため、データ数が膨大な場合は、この方法は現実的ではありません。
最適なkの値は、データの量や計算に使える資源などを考えて決める必要があります。例えば、データ数が少ない場合は、kの値を小さく設定することで、計算の手間を抑えつつ、ある程度の精度を確保することができます。また、計算に使える資源が限られている場合は、kの値を小さく設定する必要があります。逆に、データ数が多く、計算資源も十分にある場合は、kの値を大きく設定することで、より高い精度でモデルの性能を評価することができます。
kの値 | 検証の精度 | 計算の手間 | 説明 |
---|---|---|---|
小さい (例: 2, 3) | 低い | 少ない | 学習データが少ないため、モデルがデータの特徴を十分に捉えられない。 |
大きい (例: 20, 30) | 高い | 多い | 学習データが多いため、モデルがデータの特徴をより正確に捉えられるが、計算に時間がかかる。 |
データ数と同じ (一つ抜き交差検証) | 非常に高い | 膨大 | データごとにモデルの学習を行う必要があるため、データ数が膨大な場合は現実的ではない。 |
5, 10 (一般的) | バランスが良い | バランスが良い | よく使われる値。 |
データ分割の注意点
機械学習モデルを作る際には、学習に使うデータと性能を確かめるためのデータを分けておくことが大切です。この作業をデータ分割と言い、主にホールドアウト検証や交差検証といった手法で使われます。しかし、データをただ闇雲に分割するだけでは、正しい性能評価ができない場合があります。いくつかの注意点について説明します。
まず、時系列データを取り扱う場合、時間の流れを無視した分割は禁物です。例えば、株価予測モデルを作る際に、未来の株価データが学習データに混ざってしまうと、まるで未来の答えを見ながら学習しているような状態になってしまいます。これでは、モデルの実際の予測能力を正しく測ることができません。正しいやり方は、過去のデータで学習を行い、未来のデータで性能を検証することです。こうすることで、現実世界と同じように、モデルが過去の情報だけを使って未来を予測する能力を評価できます。
次に、データの偏りにも注意が必要です。例えば、病気の診断モデルを開発する際に、患者のデータと健康な人のデータに大きな差があると、モデルが偏った学習をしてしまう可能性があります。つまり、少ない方のデータの特徴を十分に学習できず、予測精度が落ちてしまうのです。このような事態を防ぐためには、層化抽出法といった手法が有効です。これは、元のデータの比率を保ったまま、学習データと検証データを分割する手法です。例えば、患者と健康な人の比率が19であれば、分割後のデータもこの比率を維持するように分割します。こうすることで、少ないデータも過不足なく学習に利用され、偏りの影響を抑えた、より信頼性の高い評価が可能になります。
このように、データ分割は単純な作業に見えて、実は様々な落とし穴があります。データの種類や特性を理解し、適切な分割方法を選ぶことが、精度の高い機械学習モデル開発の第一歩と言えるでしょう。
注意点 | 問題点 | 解決策 | 目的 |
---|---|---|---|
時系列データの分割 | 時間の流れを無視した分割は、未来のデータが学習データに混ざり、正しい性能評価ができない。 | 過去のデータで学習、未来のデータで検証 | 現実世界と同じ条件でモデルの予測能力を評価する |
データの偏り | データの偏りにより、モデルが偏った学習をしてしまい、予測精度が落ちる。 | 層化抽出法を用いて、元のデータの比率を保ったまま分割 | 偏りの影響を抑えた、信頼性の高い評価を行う |
様々な検証手法
機械学習モデルの性能を正しく測るためには、様々な検証手法を使いこなすことが大切です。この検証手法は、限られたデータからモデルの汎化性能、つまり未知のデータに対する予測能力を的確に見積もるための重要な手段となります。
よく知られている手法として、データを訓練データとテストデータに分割するホールドアウト検証があります。この手法は手軽に利用できる反面、データの分割方法によって結果が大きく変わる可能性があります。そこで、より安定した評価を行うために、k分割交差検証がよく用いられます。この手法は、データをk個のグループに分け、各グループを順番にテストデータとして使い、残りを訓練データとして学習を行います。k回の検証結果を平均することで、より信頼性の高い評価を得ることができます。
さらに、データの特性を考慮した検証手法も存在します。例えば、層化k分割交差検証は、各グループ内のデータのクラス比率を元のデータセットと同じになるように分割を行います。これは、分類問題において、特定のクラスのデータ数が少ない場合などに、偏った評価を防ぐために有効です。
また、Leave-One-Out交差検証は、k分割交差検証のkをデータ数と同じにした場合に相当します。つまり、データを一つずつテストデータとして用い、残りの全てを訓練データとして学習を行います。この手法は、データ数が少ない場合に有効ですが、計算量が多いため、大規模なデータセットには向きません。
このように、様々な検証手法にはそれぞれ利点と欠点があります。そのため、データの量や種類、モデルの特性、そして検証の目的などを考慮して、最適な手法を選ぶ必要があります。適切な検証手法を用いることで、過学習や過少適合といった問題を早期に発見し、より精度の高い、信頼できるモデルを構築することができます。
検証手法 | 説明 | 利点 | 欠点 | 適用場面 |
---|---|---|---|---|
ホールドアウト検証 | データを訓練データとテストデータに分割する。 | 手軽に利用できる。 | データの分割方法によって結果が大きく変わる可能性がある。 | 手軽に性能評価を行いたい場合。 |
k分割交差検証 | データをk個のグループに分け、各グループを順番にテストデータとして使い、残りを訓練データとして学習を行う。k回の検証結果を平均する。 | より安定した評価を行うことができる。 | kの値の選択が重要。 | データ数が中程度の場合。 |
層化k分割交差検証 | 各グループ内のデータのクラス比率を元のデータセットと同じになるように分割を行うk分割交差検証。 | 分類問題において、特定のクラスのデータ数が少ない場合などに、偏った評価を防ぐことができる。 | kの値の選択が重要。 | 分類問題で、クラスの偏りがある場合。 |
Leave-One-Out交差検証 | k分割交差検証のkをデータ数と同じにしたもの。 | データ数が少ない場合に有効。 | 計算量が多いため、大規模なデータセットには向かない。 | データ数が少ない場合。 |
適切な手法の選択
機械学習の分野では、作り上げた模型の良し悪しを正確に見極めることが肝要です。そのためには、様々な検証方法が存在しますが、どの方法を選ぶかは状況によって異なります。一口に検証といっても、扱うデータの量や種類、使える計算機の力、そして検証の目的によって最適な方法が変わるからです。
例えば、データの量が限られている場合は、「k分割交差検証」と呼ばれる方法が有効です。この方法は、少ないデータを何度も使い回し、その度に模型の評価を行うことで、限られたデータから最大限の情報を得ようとするものです。模型の訓練にも検証にも同じデータを使うことで、データ不足による偏りを抑える効果が期待できます。
一方、大量のデータが使える場合は、「ホールドアウト検証」と呼ばれる比較的簡素な方法でも十分な精度が得られることがあります。この方法は、データを訓練用と検証用に分割し、それぞれ一度だけ使うというものです。計算の手間が少なくて済むため、大規模なデータにも対応しやすいのが特徴です。
また、株価の変動データのような、時間の流れに沿って記録された「時系列データ」には、上記の方法とは異なる特別な分割方法が必要です。過去のデータから未来の値を予測するといった場合に、時系列データの特性を無視した分割をしてしまうと、正しい評価ができません。未来のデータを使って過去のデータを評価してしまうという、論理的にあり得ない状況が発生してしまうからです。
このように、それぞれの検証方法には得意不得意があるため、データや目的に合わせて適切な方法を選ぶ必要があります。適切な方法を用いることで、模型の評価の信頼性を高め、より効果的な模型作りにつなげることができます。
検証方法 | データ量 | 特徴 | 適用例 |
---|---|---|---|
k分割交差検証 | 少ない | 限られたデータを有効活用、データ不足による偏りを抑制 | – |
ホールドアウト検証 | 多い | 計算コストが低い、大規模データに対応しやすい | – |
時系列データ分割 | 時系列データ | 時間の流れを考慮した分割、未来のデータで過去を評価するのを防ぐ | 株価予測 |