サプライチェーンの基礎知識

サプライチェーンの基礎知識

はじめに

私たちの身の回りにある商品は、長い道のりを経て消費者の手に届きます。 食料品、洋服、家電製品など、普段何気なく使っているこれらの品物は、実は複雑な過程を経て私たちの生活の一部となっています。この製品の旅路全体を「供給連鎖」と呼びます。

供給連鎖は、原材料の調達から始まります。農産物であれば畑で栽培され、工業製品であれば鉱山から資源が掘り出されます。そして、集められた原材料は工場へと運ばれ、製品へと加工されます。この製造過程では、様々な部品や材料が組み合わされ、完成品へと形を変えていきます。

製品が完成すると、次は保管の段階です。倉庫や保管施設で適切な環境のもと管理され、注文に応じて出荷されます。製品はトラック、電車、船、飛行機など様々な輸送手段を使って消費者の近くまで運ばれます。そして、お店に陳列され、私たちが手に取ることができるようになるのです。

供給連鎖は、社会全体の活動にとって重要な役割を果たしています。人々の生活に必要な物資を届けるだけでなく、雇用を生み出し、経済を活性化させる力も持っています。まるで人体の血管のように、社会の隅々まで物資を送り届け、経済活動を支えているのです。

しかし、供給連鎖は常に順調に機能するとは限りません。自然災害や世界情勢の変化によって、供給が滞ってしまうこともあります。近年では、予期せぬ事態によって供給連鎖が混乱し、商品不足や価格高騰といった問題が発生しました。このような事態を避けるためにも、供給連鎖の仕組みを理解し、持続可能な供給体制を構築することが重要です。本稿を通して、供給連鎖への理解を深め、より良い消費活動、ひいては持続可能な社会の実現について考えていきましょう。

調達

ものづくりは、必要な材料を集めることから始まります。材料調達は、製品の出来栄えや価格に直結する大切な仕事です。良い品を、適正な価格で、必要な時に手に入れることが、ものづくりの第一歩です。

調達担当者は、多くの材料供給元を調べ、比較検討します。価格だけでなく、材料の質や、納期も大切な要素です。複数の供給元を天秤にかけ、最も条件の良い供給元を選びます。しかし、一つの供給元に頼り切ってしまうと、何かトラブルがあった際に材料が手に入らなくなる可能性があります。そこで、複数の供給元と契約を結ぶことで、安定した供給を確保します。これは、材料調達におけるリスク管理の一つです。

近年、環境問題への関心が高まっています。地球環境を守るために、持続可能な方法で作られた材料を調達することが求められています。例えば、森林を破壊せずに伐採された木材や、有害物質を含まない材料を選ぶなどです。このような倫理的な調達を行うことは、企業が社会的な責任を果たすことにもつながります。消費者は、環境に配慮した製品を求めるようになってきており、企業イメージの向上にも貢献します。加えて、持続可能な調達は、長い目で見て、資源の枯渇を防ぎ、将来世代に豊かな地球環境を残すことにもつながります。つまり、倫理的な調達は、企業の持続可能性にも不可欠な要素と言えるでしょう。

製造

買い集めた材料は、工場で製品へと姿を変えます。決められた手順に従って、材料を切ったり、組み合わせたり、形を整えたりと、様々な作業が行われます。この一連の工程を、滞りなくスムーズに進めることが、製造ではとても大切です。いかに効率よく製品を作れるかが、工場の成果を大きく左右するからです。

作業の効率を高めるために、様々な工夫が凝らされています。例えば、人の手で行っていた作業を機械に置き換えることで、作業時間を大幅に短縮し、たくさんの製品を一度に作ることができるようになります。また、作業の手順そのものを見直すことで、無駄な動きをなくし、作業をより簡単にすることも可能です。こうした改善を積み重ねることで、生産性は向上し、より多くの製品を世の中に送り出すことができるようになります。

品質を守ることも、製造では同様に重要です。せっかく製品を作っても、それが壊れていたり、使い物にならなかったりしては意味がありません。そのため、工場では厳しい検査が行われています。製品が正しく作られているか、きちんと動くか、一つ一つ丁寧に確認することで、不良品の出荷を防いでいます。高い品質を保つことは、お客様の信頼を得る上で欠かせない要素です。

さらに、製造の現場では、環境への配慮も欠かせません。製品を作る過程で、エネルギーを使ったり、ゴミを出したりすることは避けられません。しかし、限りある資源を大切にし、地球環境を守るためには、これらの環境への負荷を減らす努力が求められます。例えば、使うエネルギーの量を減らしたり、ゴミをなるべく出さないようにしたり、リサイクルできるものは再利用したりと、様々な取り組みが行われています。将来の世代に美しい地球を残すために、製造の現場でも環境への配慮はますます重要になってきています。

保管と配送

製造された製品は、消費者の手に届くまで、保管と配送という二つの重要な段階を経ます。保管は、製品の品質を維持しながら、必要な時に必要な量を供給できるよう管理する工程です。保管場所として倉庫が用いられますが、ただ製品を置いておくだけでは不十分です。製品によっては、適切な温度や湿度が保たれていなければ、品質が劣化してしまう可能性があります。例えば、食品や医薬品などは、温度変化に敏感なため、厳密な温度管理が必要です。また、精密機器なども、湿度の影響を受けやすいため、適切な湿度管理が求められます。さらに、在庫管理システムを導入することで、製品の入庫から出庫までを正確に把握し、在庫の過不足を防ぐことができます。過剰な在庫は保管コストの増加につながり、不足は機会損失につながるため、適切な在庫管理は非常に重要です。

一方、配送は、保管された製品を消費者に届ける工程です。現代社会において、消費者は迅速な配送を求めています。注文から商品到着までの時間が短いほど、顧客満足度は向上します。そのため、配送においては、スピードが重視されます。しかし、ただ速く届ければ良いというわけではありません。確実性も同時に求められる要素です。消費者が指定した場所へ、間違いなく商品を届けることが重要です。そのため、配送ルートの最適化や、荷物の追跡システムの導入など、物流効率の向上が欠かせません。近年では、環境問題への意識の高まりから、環境負荷の低い配送方法も注目されています。従来、長距離輸送にはトラックが主に用いられてきましたが、トラック輸送は二酸化炭素排出量が多いため、環境への影響が懸念されています。そのため、二酸化炭素排出量の少ない鉄道輸送や海上輸送への転換が進められています。このように、保管と配送は、製造から消費までの一連の流れの中で重要な役割を担っており、常に効率化と環境への配慮が求められています。

販売と消費

商品は、お店やインターネット上の店などを通して、買いたい人に届けられます。物を売るには、買いたい人が何を求めているかをしっかりと理解し、うまく売るための計画を立てることが大切です。買いたい人の行動を調べ、誰に売りたいのかを決めて、その人たちに合わせた商品作りや宣伝活動を行うことで、より多くの商品を売ることができます。

買いたい人は、商品を買って使うことで、商品が作られてから届くまでの流れの最後の部分を担います。買いたい人の行動は、商品が作られてから届くまでの一連の流れ全体に影響を与えます。例えば、環境に優しい商品を選ぶ人が増えれば、環境に配慮した商品を作る会社が増え、商品を運ぶ会社も環境に優しい方法を考えるようになります。このように、買いたい人の行動は、地球に優しい持続可能な商品の流れを作ることに繋がります。

お店で商品を手に取る場面を考えてみましょう。商品の見た目や値段、商品の説明書きなどを見て、買うかどうかを決めます。また、インターネットで商品を買う場合は、商品の口コミや評価も参考にします。このように、買いたい人は様々な情報をもとに商品の購入を決めています。商品を作る会社や売る会社は、これらの情報を提供することで、買いたい人の行動を促すことができます。

近年では、インターネットの普及により、商品の売買の仕方も大きく変わってきました。インターネット上のお店では、たくさんの商品を比較検討したり、口コミを参考にしたりすることが容易になりました。また、場所や時間に関係なく商品を購入できるため、買いたい人にとって便利な世の中になっています。一方で、実物を見ずに商品を買うことになるため、商品の品質や安全性など、買いたい人が安心して商品を買える仕組み作りも重要になってきています。

今後の展望

世界が繋がり、技術が急速に進む中で、物の流れである供給網は、変化し続けています。かつてないほど複雑化した今の供給網を、より良くしていくために、人工知能やあらゆる物がインターネットにつながる技術が使われ始めています。これらの技術は、供給網をより無駄なく、かつ環境にも優しいものへと変えていく力を持っています。

しかし、良いことばかりではありません。近年、思いもよらない自然災害や、世界中に広がる病気が、供給網に大きな混乱をもたらしています。このような、いつ起こるか分からない問題に備える強さを持つことも、これからの供給網には必要です。具体的には、複数の供給元を確保したり、普段使っていない輸送路を準備したり、非常時に備えた倉庫を設けるなどが考えられます。

また、供給網は、ただ物を運ぶだけではなく、社会全体にとって大切な役割を担うようになっています。例えば、環境への負担を減らす、地域経済を活性化させる、人々の暮らしをより良くするなど、様々な役割が期待されています。これまでのように、ただ物を供給するだけでなく、環境問題や社会問題の解決にも貢献することで、持続可能な社会の実現に貢献していくでしょう。これからの供給網は、社会全体にとってなくてはならないものへと進化していくと考えられます。