AI・データ契約ガイドライン解説
AIを知りたい
先生、『AI・データの利用に関する契約ガイドライン』って、AIを作る手順が4つに分かれているんですよね?ちょっと複雑でよくわからないんですけど、教えてもらえますか?
AIエンジニア
そうだね、4つの段階に分かれている。まず、本当に作れるか確認する『アセスメント』、次に少し試してみる『PoC』、実際に作る『開発』、そして作った後さらに良くする『追加学習』だよ。それぞれ目的や成果物、必要な契約も違うんだ。
AIを知りたい
なるほど。なんとなく流れはわかりました。それぞれの段階でどんな契約が必要なのかが知りたいです。
AIエンジニア
『アセスメント』では秘密保持契約、『PoC』では導入検証契約、『開発』ではソフトウェア開発契約、そして『追加学習』では、改めて契約内容を確認する必要があるね。それぞれの段階で必要な契約が変わってくることを覚えておこう。
AI・データの利用に関する契約ガイドラインとは。
人工知能に関係する言葉である『人工知能と情報の利用に関する契約の手引き』について説明します。この手引きは、経済産業省が発表したもので、学習済みの模型を作るのに適した契約の形式を採用し、関係者間の認識を合わせるための計画の管理方法を示しています。
この手引きでは、開発の工程を四つに分けています。それぞれ、評価、実証、開発、追加学習です。
評価の段階では、ある程度の量の情報を使って、模型を作れるかどうかを確かめます。成果としては、報告書などがあります。この段階での契約としては、秘密保持契約書などがあります。
実証は、新しい考え方や発想を実現できるかを確認するために、一部を実際に作って試すことです。目的は、学習用の情報を使って、目標とする精度の模型を作れるかどうかを確かめることです。成果としては、報告書や学習済みの模型などがあります。この段階での契約としては、導入検証契約書などがあります。
開発は、実際に学習済みの模型を作ることです。成果物も学習済みの模型です。この段階での契約としては、ソフトウェア開発契約書などがあります。
最後に、追加学習は、販売者が納品した学習済みの模型に追加の情報を用いてさらに学習させることです。成果物は、再利用できる模型です。
概要
経済産業省が発表した『人工知能と情報の活用に関する契約の手引き』は、人工知能と情報活用に関する契約の型を提供するだけにとどまりません。円滑な計画実行のための指針も示しています。この手引きは、人工知能開発を評価、実証実験、開発、追加学習という四つの段階に分け、それぞれの段階に最適な契約の方式と計画管理手法を示すことで、関係者間の認識の違いを防ぎ、開発を円滑に進めることを目指しています。
まず、評価段階では、実現可能性の調査や必要となる情報の確認等を行い、基本的な合意を形成することが重要です。この段階では、費用負担や秘密保持に関する取り決めを明確にする必要があります。次に、実証実験段階では、小規模な試験を通して人工知能の性能や課題を検証します。この段階では、実証実験の範囲や評価指標、知的財産権の帰属等について詳細に契約内容を定めることが重要となります。
そして、開発段階では、本格的な人工知能の構築が始まります。この段階では、開発の進捗管理や品質保証、責任範囲等について明確な取り決めが必要です。最後に、追加学習段階では、運用開始後も継続的に性能向上を図るため、新たな情報の収集や学習を行います。この段階では、追加学習の方法や費用負担、データの提供方法等に関する取り決めが必要です。
特に、人工知能開発において情報は非常に重要です。この手引きでは、情報の権利関係や利用範囲を明確にするための契約条項についても詳しく説明されています。例えば、情報の所有権、利用目的の制限、第三者への提供の可否、秘密保持義務等、様々な観点から情報の取り扱いについて規定することが必要です。このように、この手引きは、人工知能開発における契約や計画管理の実務に役立つ情報を提供し、人工知能技術の普及と発展に貢献することが期待されます。
段階 | 目的 | 契約のポイント |
---|---|---|
評価 | 実現可能性調査、必要情報の確認、基本合意形成 | 費用負担、秘密保持 |
実証実験 | 小規模試験による性能・課題検証 | 実証実験の範囲、評価指標、知的財産権の帰属 |
開発 | 本格的なAI構築 | 進捗管理、品質保証、責任範囲 |
追加学習 | 運用開始後の継続的な性能向上 | 追加学習の方法、費用負担、データの提供方法 |
アセスメント
計画の最初の段階である評価について説明します。この評価は、まだ情報が少ない段階で、計画が本当に実現できるのかを確かめるための大切な作業です。具体的には、手元にある情報だけで、目指す人工知能を作れるのかどうかを判断します。
この段階では、既に存在する情報を使って簡単な分析を行います。そして、実現できる見込みがあるのか、どのような問題が起こる可能性があるのかを調べます。この調査の結果は、報告書にまとめて示されます。
評価を行う際には、秘密保持契約を結びます。これは、提供された情報の秘密を守るためにとても重要です。提供された情報を許可なく他の人に教えたり、使ったりすることはありません。
この評価の結果によって、計画を続けるかどうかが決まります。もし、実現の見込みが低い、あるいは問題が大きすぎると判断された場合は、計画を中止することもあります。逆に、実現の見込みが高いと判断された場合は、次の段階へと進みます。次の段階では、より多くの情報を集め、本格的な開発が始まります。つまり、この最初の評価は、計画全体の進む方向を決める重要な役割を担っていると言えるでしょう。
概念実証(PoC)
新しい考えや仕組みが実際にうまくいくかどうかを確かめるために、実際にやってみることを「概念実証」と言います。これは、机上の空論ではなく、現実のデータを使って試しに作ってみるという意味です。
例えば新しい商品の開発を想像してみてください。企画会議で良いアイデアが出ても、本当に売れるかどうかは分かりません。そこで、まずは試作品を作ってみて、少数の顧客に使ってもらいます。これが概念実証です。
概念実証では、必ずしも全ての機能を完璧に再現する必要はありません。重要なのは、核となる考え方が実際に機能するかどうかを検証することです。商品開発の例でいえば、全ての機能を搭載した完成品を作るのではなく、主要な機能だけを持った試作品を作るのです。そして、その試作品を顧客に使ってもらい、使い勝手や性能を確認します。
集めたデータは分析し、報告書にまとめます。報告書には、試作品がどの程度うまく機能したのか、問題点は何だったのか、改善すべき点は何なのかなどを記述します。そして、この報告書をもとに、本格的な開発に進むかどうかを判断します。試作品が期待通りの成果を出していれば、開発を継続します。そうでなければ、計画を修正したり、開発を中止したりする判断が必要になります。
概念実証を行う際には、関係者との契約をしっかり結んでおくことが大切です。誰が何をどこまで作るのか、成果物に関する権利はどうなるのかなどを明確にしておけば、後々のトラブルを防ぐことができます。また、費用や期間についても事前に合意しておく必要があります。
概念実証は、新しい考えを現実世界で試すための重要なステップです。限られた資源で効率的に検証を行うことで、大きな損失を防ぎ、成功の可能性を高めることができます。
項目 | 説明 |
---|---|
概念実証とは | 新しい考えや仕組みが実際にうまくいくかを検証するために、実際にやってみること。机上の空論ではなく、現実のデータを使って試しに作ってみる。 |
例 | 新商品の開発時、試作品を作り少数の顧客に試用してもらう。 |
目的 | 核となる考え方が実際に機能するかどうかを検証する。必ずしも全ての機能を完璧に再現する必要はない。 |
方法 | 主要な機能のみを持った試作品を作り、顧客に試用してもらい、使い勝手や性能を確認する。 |
データ分析と報告 | 集めたデータを分析し、報告書にまとめる。報告書には、試作品の機能の程度、問題点、改善点を記述する。 |
判断 | 報告書に基づき、本格的な開発に進むかを判断する。 |
契約の重要性 | 関係者との契約をしっかり結ぶ(役割分担、成果物の権利、費用、期間など)。 |
メリット | 限られた資源で効率的に検証を行い、大きな損失を防ぎ、成功の可能性を高める。 |
開発
開発の段階では、実証実験で得られた成果をもとに、本格的に人工知能のひな形作りに取り組みます。実証実験で使ったものよりも多くの情報を使って、より高性能なひな形を作っていきます。この段階での成果は、完成した人工知能のひな形です。契約については、まず、ソフトウェア開発の契約を結びます。開発にかかる費用や、いつまでに完成させるか、そして、完成したものの品質を保証する内容などを、はっきりと決めておくことが大切です。また、開発の進み具合を報告することや、開発中に問題が起きたときの対応についても、契約に盛り込むことが必要です。
具体的には、実証実験で効果が確認された手法や調整内容を基に、より大規模なデータセットを用いて人工知能のひな形を学習させます。この学習過程では、データの前処理や、さまざまな種類のひな形を試し、最適なものを選び出す作業が発生します。また、性能を高めるための細かい調整も必要です。
開発期間中は、定期的に進捗状況を報告し、問題点やその解決策を共有することが重要です。これにより、依頼主との認識のずれを防ぎ、円滑な開発を進めることができます。また、開発の最終段階では、完成した人工知能のひな形をテストし、目的の性能が達成されているかを確認します。
契約内容には、これらの開発工程に関する詳細な記述を含めるべきです。例えば、使用するデータの種類や量、ひな形の学習方法、性能評価の方法、進捗報告の頻度、問題発生時の対応手順などを明確に定めておくことで、後々のトラブルを避けることができます。さらに、知的財産権の帰属や、開発後の保守・運用についても、契約段階で取り決めておくことが重要です。これにより、開発から運用まで、一貫した計画のもとでプロジェクトを進めることができます。
追加学習
{追加学習とは、既に開発を終えた人工知能の模型をさらに賢くするための手法です。具体的には、新しい情報を模型に与え直して、学び直しをさせることを指します。
人工知能の模型は、まるで人間の子供のように、最初は限られた知識しか持ち合わせていません。しかし、実社会で働き始めると、様々な新しい経験や情報に触れることになります。これらの新しい情報を吸収し、理解することで、より的確な判断や予測ができるようになるのです。これが追加学習の目的です。
例えば、商品の需要予測を行う人工知能を想像してみてください。この人工知能は、過去の販売データや季節の変わり目などを学習して、将来の需要を予測します。しかし、予期せぬ出来事、例えば天候の急変や流行の変化などは、初期の学習データには含まれていないかもしれません。このような場合、追加学習によって最新の情報を模型に与えることで、より精度の高い需要予測が可能になります。
追加学習は一度行えば終わりではなく、必要に応じて繰り返し行われることが一般的です。世の中の状況は常に変化しています。人工知能が常に最適な働きをするためには、継続的に新しい情報を学び続ける必要があるのです。ちょうど人間が常に学び続ける必要があるのと同じです。
追加学習を行う際には、費用や情報の提供方法、学習後の模型の性能などについて、事前にしっかりと取り決めておくことが重要です。また、状況の変化に合わせて柔軟に対応できるような契約形態にしておくことも大切です。そうすることで、人工知能を長く、効果的に活用していくことができるでしょう。
項目 | 説明 |
---|---|
追加学習 | 既に開発されたAIモデルをさらに賢くする手法。新しい情報をモデルに与え直し、学び直しさせる。 |
目的 | 新しい情報を取り込み、より的確な判断や予測を可能にする。 |
例:商品需要予測AI | 過去のデータで学習し需要予測。追加学習で天候急変や流行の変化など最新情報に対応し精度向上。 |
頻度 | 必要に応じて繰り返し行う。世の中の変化に対応するため継続的に学習。 |
注意点 | 費用、情報の提供方法、学習後の性能、契約形態など事前に取り決め。状況の変化に柔軟に対応できる契約形態が重要。 |
意義と展望
人工知能と情報利用に関する契約の手引きは、人工知能開発事業における契約を共通の形式にすることを後押しし、人工知能技術の広まりと発展に大きく役立つと考えられています。この手引きは、情報の権利関係や利用範囲をはっきりさせることで、情報提供者と人工知能開発者の間の信頼関係を築き、安心して情報取引をするための土台を作ります。
これまで、人工知能開発における契約は、個々の事業ごとに内容が異なり、標準化されていませんでした。そのため、契約内容の理解や交渉に時間がかかり、開発の遅延や費用増加につながることもありました。また、情報提供者にとっては、自身の情報がどのように利用されるか不明確なまま提供することに不安を感じ、情報提供に消極的になる場合もありました。この手引きは、こうした問題を解決し、円滑な人工知能開発を促進するために作成されました。
この手引きでは、人工知能開発に必要な情報の定義、情報の権利関係、利用範囲、責任分担、秘密保持など、契約において重要な項目について、具体例を交えながら分かりやすく解説しています。また、契約書ひな形も提供しており、企業はひな形を参考に自社の状況に合わせて修正することで、容易に契約書を作成できます。
今後、人工知能技術の進歩や情報活用の広がりに合わせて、手引きの内容も見直され、より効果的なものへと改善されていくでしょう。そして、様々な分野で人工知能技術が社会で実際に使われ、多くの新しい技術や製品が生み出されることが期待されています。この手引きが、人工知能技術の発展と社会実装を加速させる一助となることを願っています。
項目 | 内容 |
---|---|
目的 | 人工知能開発事業における契約の標準化、情報提供者と開発者の信頼関係構築、円滑な情報取引の促進 |
背景 | 従来の契約は個々の事業ごとに異なり、非効率で情報提供者の不安も招いていた |
内容 | 情報の定義、権利関係、利用範囲、責任分担、秘密保持など、重要項目を解説、契約書ひな形も提供 |
将来展望 | 技術の進歩に合わせて手引きも見直し、人工知能技術の発展と社会実装を加速させる |