SHRDLU:対話で世界を操る
1970年代初頭、人工知能の黎明期に、テリー・ウィノグラードという研究者によって画期的なシステムが開発されました。その名はSHRDLU(シュルドゥルー)。このシステムは、人間が日常的に使う言葉、つまり自然言語を使って指示を出すと、コンピュータ画面上に表現された仮想世界で、その指示通りの動作を実行することができました。
この仮想世界は「積み木の世界」と名付けられ、様々な形の積み木が配置されています。例えば、四角いブロックや三角錐、立方体などです。これらの積み木は、赤や緑、青といった様々な色で塗られており、ユーザーは「赤いブロックを緑のブロックの上に置いて」といった具体的な指示を、英語でSHRDLUに伝えることができました。すると、SHRDLUは指示された通りに、画面上の赤いブロックを緑のブロックの上に移動させるのです。
SHRDLUの革新的な点は、単に指示された通りの動作を実行するだけでなく、指示内容の理解度も高かったことです。例えば、「赤いブロックの上に何か置いて」と指示した場合、SHRDLUは緑のブロックなど、別の積み木を赤いブロックの上に置きます。また、「一番大きなブロックはどこにある?」といった質問にも、SHRDLUは仮想世界の中から一番大きなブロックを探し出し、その場所を言葉で答えることができました。
これは当時としては驚くべき能力で、コンピュータが人間の言葉を理解し、複雑な作業を実行できる可能性を示しました。SHRDLUは、人間とコンピュータが自然言語を通じてより高度な意思疎通を行う未来への道を切り開いた、人工知能研究における重要な一歩と言えるでしょう。