作業分析の新しい視点：ワークサンプリング法

作業分析の新しい視点：ワークサンプリング法

はじめに

業務をより良くするために、まず今の業務の実態を掴むことはとても大切です。よく行われている方法として、作業にどれくらいの時間がかかっているのかを、時計を使って測るやり方があります。しかし、このやり方は、時間と手間がかかってしまうという問題点があります。時間も人も限られている中で、すべての作業を細かく調べるのは難しい場合も多いでしょう。

そこで、今回は「ワークサンプリング法」というやり方をご紹介いたします。このやり方は、簡単に言うと、色々な時間に、作業者が何をしているのかを観察するというものです。例えば、１時間に１回、作業現場に行って、そこで行われている作業の種類を記録します。これを何回も繰り返すことで、それぞれの作業にどれくらいの時間がかかっているのかを推定することができます。まるで、時々写真をとることで、１日の流れを大まかに把握できるようなイメージです。

このワークサンプリング法の一番の利点は、手軽に実施できることです。時計を使って作業時間を測るやり方と比べると、必要な時間や費用を大幅に抑えることができます。また、作業者に負担をかけることも少ないため、より自然な作業の様子を観察することができます。集めたデータは、統計的な処理を行い、全体の作業時間におけるそれぞれの作業の割合を計算します。こうして得られた結果は、どの作業にどれくらいの時間がかかっているのか、どの作業に無駄が多いのかなどを分析するのに役立ちます。

近年、このワークサンプリング法は、その手軽さと効果から、多くの場で活用されるようになってきています。時間や費用をかけずに、作業改善のヒントを見つけたいと考えている方は、ぜひ一度試してみてはいかがでしょうか。

手法の概要

仕事の内容を詳しく知るための方法の一つに、作業の時間割合を調べるやり方があります。これは、作業の時間配分を、無作為に選んだ時間に何回も観察することで明らかにするものです。無作為に時間を決めることが大切で、決まった時間に偏らないようにしなければいけません。この方法は「ワークサンプリング法」と呼ばれ、作業の実態を数字で捉えるのに役立ちます。

例えば、一日の中で作業の様子を10回観察するとします。観察する時間は、朝、昼、夕方など、色々な時間帯に散らばるように、あらかじめくじ引きなどで決めておきます。そして、観察した時にどんな作業をしていたかを記録します。もし、10回の観察のうち、資料作りをしていたのが３回、会議をしていたのが２回、顧客対応をしていたのが５回だったとしましょう。そうすると、資料作りは全体の３割（10回のうち３回）、会議は２割（10回のうち２回）、顧客対応は５割（10回のうち５回）と推定できます。

このように、短い時間の観察をたくさん繰り返すことで、それぞれの作業にどれくらいの時間が使われているのかを統計的に明らかにすることができます。一回一回の観察時間は短くても、全体で多くの回数を観察することで、正確な実態を把握できるようになります。これは、たくさんの人が集まる場所で、何人かの人に話を聞くだけで、全体の様子をある程度知ることができるのと似ています。ワークサンプリング法を使うことで、作業のムダを省いたり、作業効率を上げるための改善点を見つけるのに役立ちます。

具体的な手順

仕事内容の実態を掴むための手順を、具体的に見ていきましょう。まず観察の対象となる人や部署、そして観察する作業内容を明確にする必要があります。例えば、ある部署全体の業務効率を調べたいのか、それとも特定の担当者の作業内容を詳しく知りたいのかによって、観察対象は変わってきます。観察項目についても、電話対応、書類作成、会議参加など、具体的に何を観察するのかをあらかじめ決めておくことが大切です。

次に、何回観察を行うかを決めなければなりません。観察回数は、仕事の全体像を正確に把握するために重要な要素です。観察回数が多ければ多いほど、正確なデータを得ることができますが、観察にかかる時間や人手も増えます。限られた時間や人員の中で、どれだけの回数観察を行うかは、よく考えて決める必要があります。統計的な方法を使って、適切な観察回数を計算することも可能です。

観察回数を決めたら、いつ観察を行うかを決めます。観察時間をランダムに設定することで、偏りのないデータを集めることができます。例えば、一日をいくつかの時間帯に分け、それぞれの時間帯からランダムに観察時間を選ぶといった方法があります。あらかじめ観察時間を決めてしまうと、特定の時間に偏ったデータしか得られない可能性があります。そのため、ランダムな時間設定が重要となります。

設定した時間に観察を行い、観察した内容は記録用紙などに記録します。どのような作業をしていたか、どのくらいの時間をかけていたかなど、観察項目ごとに記録します。記録は後で分析を行うための大切な資料となるため、正確で分かりやすい記録を心がけましょう。

最後に、記録したデータを元に、それぞれの作業にどれくらいの時間をかけているか、どれくらいの頻度で発生しているかを計算し、分析します。例えば、一日のうち電話対応にどれくらいの時間を費やしているか、書類作成はどの程度の頻度で行われているかなどが分かります。これらの分析結果から、業務の改善点や効率化のポイントが見えてきます。

利点と欠点

作業時間を計測し、業務改善に役立てる手法の一つに、作業抽出法があります。この手法には、長所と短所がありますので、それらを詳しく見ていきましょう。

まず、作業抽出法の長所は、従来のストップウォッチを使った方法に比べて、観察する人の負担が少ないことです。ストップウォッチ法では、観察する人が作業者一人ひとりの動きを常に目で追う必要がありますが、作業抽出法では、決められた間隔で作業の様子を記録するだけで済みます。そのため、複数の作業者を同時に観察することが可能です。また、費用の面でも、ストップウォッチ法のように特別な機器を必要としないため、抑えることができます。

一方で、作業抽出法には短所もあります。めったに起こらない作業は、観察のタイミングによっては記録されない可能性があり、正確な把握が難しいです。また、観察する項目の設定が適切でないと、期待した結果が得られないこともあります。例えば、作業の種類を大まかにしか設定しないと、作業の細かい違いを見落とす可能性があります。逆に、細かく設定しすぎると、集計が複雑になり、全体像の把握が難しくなります。さらに、観察の回数も重要です。回数が少なすぎると、偶然の要素が大きく影響し、正確な結果が得られません。逆に、多すぎると、観察する人の負担が大きくなってしまいます。

このように、作業抽出法には長所と短所があります。そのため、観察する項目や回数を適切に設定することが重要です。また、状況によっては、他の手法と組み合わせることで、より効果的な分析を行うことができます。例えば、作業抽出法で全体的な作業時間の配分を把握し、ストップウォッチ法で特定の作業の時間を詳細に分析するといった方法が考えられます。

活用事例

作業分析の手法であるワークサンプリング法は、様々な業種で広く使われています。製造業、サービス業、事務作業など、あらゆる現場で活用され、作業の改善に役立っています。

製造業では、工場における機械の稼働状況を調べたり、作業員の作業内容を分析するために用いられます。例えば、機械が実際に動いている時間と停止している時間の割合を把握することで、停止時間の原因を分析し、稼働率の向上に繋げることができます。また、作業員の作業内容を細かく分類し、それぞれの作業にどのくらいの時間がかかっているかを調べることで、無駄な作業を特定し、作業手順の見直しや改善を行うことができます。

サービス業では、従業員の接客対応の様子や顧客の待機時間を分析する際に活用されます。例えば、レジでの会計にかかる時間や、お客様がサービスを受けるまでに待たされる時間を計測することで、サービスの質の向上を図ることができます。また、従業員の接客対応の様子を観察することで、顧客満足度を高めるための改善策を検討することができます。

事務作業においても、ワークサンプリング法は様々な作業の割合を把握するのに役立ちます。例えば、書類作成、電話対応、会議、メールの処理など、それぞれの作業にどれだけの時間を使っているかを調べることで、作業効率の改善に繋げることができます。不要な作業を減らし、重要な作業により多くの時間を割くことで、生産性の向上を図ることができます。このように、ワークサンプリング法は、現場の作業を客観的に分析し、改善につなげるための効果的な手法と言えるでしょう。

まとめ

仕事の手順や流れを詳しく調べ、改善につなげる方法の一つとして「作業見本抽出法」というものがあります。これは、特定の時間帯に作業の様子を記録することで、作業の全体像を把握する手法です。比較的簡単に実施できるため、多くの職場で取り入れられています。

この手法を使う一番の利点は、作業の実態をありのままに把握できることです。作業者は、記録されていることを意識しながら作業をする必要がないため、普段通りの作業の様子を観察できます。これにより、作業の進め方や問題点を正確に捉えることができます。そして、この情報を基に、作業の無駄を省いたり、作業手順を改善したりすることができます。結果として、生産性の向上に繋がるのです。

しかし、この手法を正しく使うには、いくつかの注意点があります。まず、観察する項目を明確に定める必要があります。何を観察するのかがあいまいだと、得られた情報が役に立たない可能性があります。例えば、「書類作成」という項目ではなく、「顧客情報入力」「請求書作成」「報告書作成」など、具体的な作業内容にまで落とし込む必要があります。

次に、観察する回数を適切に決める必要があります。観察回数が少なすぎると、正確な情報を得ることができません。逆に、多すぎると時間と労力の無駄になります。観察回数は、作業の種類や複雑さ、求める精度の高さなどを考慮して決める必要があります。統計的な手法を用いて、適切な観察回数を算出することも可能です。

また、作業見本抽出法だけで全ての情報を把握することは難しい場合もあります。必要に応じて、他の分析手法と組み合わせることで、より精度の高い分析が可能になります。例えば、作業時間を計測する「ストップウォッチ法」や、作業者の動きを分析する「動作分析」などと組み合わせることで、多角的な視点から作業を分析することができます。

作業見本抽出法は、正しく使えば、業務の効率化や改善に大きく貢献する効果的な手法です。観察項目や観察回数を適切に設定し、必要に応じて他の手法と組み合わせることで、より効果的に活用することができます。