機械学習の評価指標まとめ:回帰・分類の指標一覧と選び方

機械学習モデルが「良い」か「悪い」かは、どの評価指標で測るかによって答えが変わります。このページでは、回帰・分類・物体検出で使われる主要な評価指標を一覧にまとめ、どの場面でどの指標を選べばよいかを早見表で整理しました。各指標の詳しい解説記事へのリンクも掲載しています。

まず確認:解きたい問題は回帰?分類?

評価指標は「何を予測するか」で大きく変わります。最初に問題の種類を確認しましょう。

問題の種類 予測するもの 例 主な評価指標
回帰 連続した数値 売上・家賃・気温 RMSE、MAE、MAPE、R²
二値分類 2つのうちどちらか スパム判定、病気の有無 適合率、再現率、F1、AUC
多クラス分類 3つ以上のどれか 画像の種類、問い合わせ分類 マクロF1、マイクロF1、対数損失
物体検出 物体の位置と種類 自動運転、検品 mAP

回帰の評価指標

回帰では「予測値と実測値がどれだけズレたか(誤差)」を集計して評価します。どう集計するかによって、大きな外れにどれだけ敏感かが変わります。

指標 計算のイメージ 外れ値の影響 向いている場面
RMSE(二乗平均平方根誤差) 誤差を二乗して平均し、平方根をとる 大きい 大外れを特に避けたい予測(需要予測など)
MAE(平均絶対誤差) 誤差の絶対値の平均 小さい 「平均的にどれだけズレるか」を素直に知りたいとき
MAPE(平均絶対パーセント誤差) 誤差を実測値で割って%で平均 中 規模の違う商品・店舗の精度を比べたいとき(実測値0は不可)
RMSPE 誤差率を二乗平均して平方根 大きい %で評価しつつ大外れも重く見たいとき
RAE(相対絶対誤差) 「平均値で予測した場合」の誤差との比 小さい 単純な予測より良いかを確かめたいとき
決定係数(R²) 1 −(残差の二乗和 ÷ 実測値の偏差の二乗和) 大きい モデルが変動をどれだけ説明できるかを0〜1で示したいとき
分散説明率 予測で説明できた分散の割合 大きい R²と並べて説明力を確認するとき

迷ったらRMSEとMAEを並べて見るのがおすすめです。RMSEがMAEより大きく開いていれば、一部のデータで大きく外れた予測が混ざっています。学習時の損失関数として外れ値の影響を抑えたい場合はHuber損失も選択肢になります。

RMSE・MAE・R²をその場で計算する

手元の実測値と予測値を入れると、主要な回帰指標をまとめて計算できます。

RMSE計算ツール(MAE・R²・MAPEも同時計算)

実測値と予測値をカンマ・スペース・改行区切りで入力してください。Excelから「実測値|予測値」の2列をそのまま実測値欄に貼り付けてもOKです。入力データはブラウザ内だけで計算され、送信されません。

分類の評価指標

すべての基本:混同行列

分類の指標はほぼすべて混同行列から計算されます。混同行列は予測結果を「真陽性(TP)・偽陽性(FP)・偽陰性(FN)・真陰性(TN)」の4マスに分けた表です。特に偽陽性と偽陰性のどちらが問題になるかで、選ぶべき指標が決まります。見逃し(フォールスネガティブ)が致命的な場面は少なくありません。

指標 計算式 何を重視するか
正解率(Accuracy) (TP+TN) ÷ 全体 全体の当たり率。不均衡データでは当てにならない
適合率(Precision) TP ÷ (TP+FP) 「陽性と予測したもの」の正しさ=誤検知の少なさ
再現率・感度(Recall) TP ÷ (TP+FN) 「本当の陽性」をどれだけ拾えたか=見逃しの少なさ
特異度(Specificity) TN ÷ (TN+FP) 陰性を正しく陰性と判定できた割合
F1スコア 2 × 適合率 × 再現率 ÷ (適合率 + 再現率) 適合率と再現率のバランス(調和平均)
重み付きF値(Fβ) βで再現率の重みを調整 見逃しと誤検知の重要度が違うとき
ROC曲線・AUC しきい値を動かしたときの性能の面積 しきい値に依存しない総合的な識別力
対数損失(Log Loss) 予測確率と正解のズレ 確信度まで含めた評価(確率予測の質)

F1スコア・適合率・再現率をその場で計算する

混同行列の4つの値を入れると、分類の主要指標をまとめて計算できます。

F1スコア・適合率・再現率 計算ツール(混同行列から一括計算)

混同行列の4つの件数を入力してください。入力データはブラウザ内だけで計算され、送信されません。

予測:陽性
予測:陰性
実際:
陽性
TP 真陽性
FN 偽陰性(見逃し)
実際:
陰性
FP 偽陽性(誤検知)
TN 真陰性
(β>1で再現率を重視)
正解ラベルと予測ラベルの列から計算する

1(陽性)/ 0(陰性)をカンマ・スペース・改行区切りで入力すると、混同行列を自動で作って計算します。

場面別:どの指標を重視すべきか

場面 重視する指標 理由
がん検診・不正検知・故障予知 再現率 陽性の見逃しが重大な損失につながるため
スパムフィルター・広告の自動停止 適合率 誤検知(必要なものを弾く)のコストが高いため
両方のミスが同じくらい困る F1スコア 適合率と再現率のバランスを1つの数値で見られるため
陽性がごく少ない不均衡データ F1、AUC(正解率は使わない) 全部「陰性」と答えるだけで正解率が高く見えてしまうため
しきい値をまだ決めていない AUC しきい値ごとの性能をまとめて比較できるため

多クラス分類の場合

3クラス以上では、クラスごとのF1をどう平均するかで2種類に分かれます。マクロF1は各クラスを平等に扱うため少数クラスの性能が反映されやすく、マイクロF1は全サンプルをまとめて計算するため多数派クラスの影響が大きくなります。

物体検出・音声認識の評価指標

  • mAP:物体検出で、位置の正確さ(IoU)とクラス判定をまとめて評価する標準指標です。
  • 音声認識の評価指標(WER・CER):単語や文字の誤り率で文字起こしの精度を測ります。

評価を正しく行うためのポイント

  • 交差検証:データの分け方による偶然の良し悪しを避け、性能を安定して見積もります。
  • 過学習:学習データでだけ成績が良い状態です。検証データの指標と必ず比べましょう。
  • 学習曲線:データ量や学習回数に対する指標の推移から、過学習か学習不足かを診断できます。
  • 誤差関数(損失関数)と目的関数:学習中に最小化する値と、最終的に評価する指標は別物になることがあります。
  • 外れ値と標準偏差:回帰指標の値を解釈する前に、データのばらつきを確認しておくと判断を誤りません。

よくある質問

Q. 回帰でRMSEとMAEのどちらを使えばよいですか?

大きな外れを強く避けたいならRMSE、平均的なズレの大きさを素直に知りたいならMAEです。実務では両方を並べ、差が大きいときは外れ値の原因を調べるのが定番です。

Q. 正解率(Accuracy)だけで評価してはいけないのはなぜですか?

陽性が1%しかないデータでは、すべて「陰性」と予測するだけで正解率99%になってしまうからです。不均衡データでは適合率・再現率・F1・AUCを確認しましょう。

Q. R²がマイナスになるのはどういう状態ですか?

モデルの予測が「実測値の平均をそのまま答える」よりも悪い状態です。特徴量やモデルの設定を見直す必要があります。